時価総額が1兆ドルを超え、世界で存在感を増す米国のEV(電気自動車)メーカー、テスラ。日本での販売台数は少ないが、クルマの電動化の大波に乗り、いずれ日本のEV市場ものみ込んでしまうのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が試乗レポートしながら考察する。
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クルマに対する電動化の圧力が日増しに高まる今日、テスラ株の高騰が止まらない。11月1日には1株あたりの株価が1200ドル(約13万7000円/1ドル=114円換算。以下同)を突破した。
テスラが上場したのは2010年6月29日だが、公開価格は17ドル。昨年の株式分割(1株を5株に)を反映させるとたったの3.4ドルだ。11月3日の終値は1213.79ドル。11年あまりで株価が357倍というのは、もはやアメリカンドリームそのものと言っていいだろう。
トヨタが逃した魚は大きかった
時価総額は約1.2兆ドル(約137兆円)で、世界の自動車メーカーの中ではぶっちぎりのトップ。3000億ドル弱で推移している時価総額世界2位のトヨタ自動車の4倍、3位のフォルクスワーゲングループ(約1200億ドル)との対比では実に10倍である。
この株価上昇により、実質オーナーのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)の個人資産は3000億ドル(約34兆円)を突破した。今年1月に米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏を抜いて個人資産額世界一になったと報じられたが、その時の個人資産額は1885億ドルだった。それから1年も経たないうちにさらに1000億ドル以上も積み上がっているのである。これもまた現代版ゴールドラッシュというべきものだ。
トヨタはテスラが株式を公開する直前の2010年、テスラに5000万ドルを出資していた。出資当時は1ドル=90円近辺で、日本円に換算すると45億円程度。テスラの発行株式に占める割合は3%程度だったという。
もしテスラと途中で袂を分かっていなかったら、今頃は評価額3兆円以上にはなっていたはずだし、テスラを真っ先に評価したレガシーカーメーカーとみなされ、ブランドイメージの向上にも貢献したことだろう。トヨタとテスラは企業風土もモノの考え方もほとんど真逆なので“離婚”は不可避だったろうが、まさに逃がした魚は大きかったといえる。