衆院選に勝利した自民・公明両党は、今月中にも大規模経済対策をまとめる見通しだ。注目を集めているのが、公明党が衆院選の公約に掲げた「18歳以下の子供への10万円の一律給付(未来応援給付)」である。実現に向けて動きを活発化させる公明党に対して、岸田文雄・首相がどう対応するかに、関係者の視線が集まっている。
公明党の公約が波紋を広げている一因は、一律給付だと「子供がいる富裕層の家庭」にも現金10万円が渡るからだ。厚労省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、18歳未満の児童がいる世帯の所得は平均745.9万円で、全世帯平均の552.3万円よりも多い。高齢者世帯は平均312.6万円、高齢者世帯以外の世帯は平均659.3万円だ。全国紙政治部記者はこう話す。
「少子化の原因のひとつとして、“子育てにお金がかかりすぎる”という点が指摘されている。子育てにお金を割く余裕がなく、子供をつくりたくても二の足を踏んでしまう夫婦は少なくありません。そうした世帯には支援が届かず、子供を育てる余裕のある収入の多い家族に給付がいってしまうのが、一律給付で懸念される点です。自民党内からは、公明党の公約を丸呑みすれば“バラマキ批判”を受けると心配の声があがっている」
前掲の厚労省のデータを見ると母子家庭の平均所得は約300万円にとどまり、もちろん生活が逼迫した子育て世帯への支援は必要だと考えられる。そのため、「自民党内には一律給付ではなく所得制限を設けるべきという主張も根強くある」(同前)という。
そうしたなかで注目されるのが、岸田首相の判断だ。「岸田首相には、国民への給付を巡って公明党にしてやられた苦い記憶がある」(自民党関係者)からだ。
昨年4月、政府が新型コロナウイルス対策を講じるにあたって、当時、政調会長だった岸田首相は減収世帯に限定した「30万円給付」のとりまとめを主導した。しかし、「1人一律10万円給付」を求める公明党と世論の不満の声を受け、当時の安倍晋三・首相は、一度は閣議決定した減収世帯に限定する案をひっくり返し、公明党の主張を受け入れて一律10万円給付に切り替えたのだ。