中国の首都、北京市の人民代表大会(市議会議員)選挙に立候補していた独立系の人権活動家ら14人が11月5日の投票日の4日前に共同声明を発表し、警察などの当局者が陰に陽に選挙活動を妨害していることを理由に、「個人の自由と生活の安全を考慮して選挙活動を中止せざるを得なくなった」として、立候補の取り消しを明らかにした。
中国では人民代表大会選挙は立候補制だが、実態は共産党や軍や国有企業などの支持母体に承認された人々が選出される「推薦制」となっており、西側の自由選挙とは程遠いシステムとなっている。
立候補していたのは人権活動家の李文洲氏、王奇玲氏、奈緒金環氏らで、共同声明によると、14人が立候補を表明して以来、警察が候補者の「警護」を名目に、街頭演説や支持者らへのあいさつなど、1日中彼らの行動を監視。「休憩」や「視察・見学」などを理由に警察署に連れて行かれ、そのまま軟禁状態に置かれるなど、さまざまな嫌がらせを受けたという。
また、立候補者の家族周辺にも圧力が及んでおり、多数の警察官が24時間体制で自宅周辺を取り巻いて「警護」しており、だれも近づけない状況になっている。さらに、住宅の大家が突然訪ねてきて「賃貸住宅の更新が迫っており、すぐに立ち退いてほしい」と迫られるなどの嫌がらせも受けた。
同じような状況は中国各地でも起きており、湖北省のある市では、立候補予定者が市政府に立候補をするための推薦書類を要求したところ、「あなたに渡す書類はない」などと追い返されたり、推薦書をもらって提出したところ「書類の記載が不備なため、受領することはできない」などと言われた例もある。
ある人権活動家は米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に対して、「当局は、公的な推薦を受けていない市民が選挙に出馬するのを全力で阻止するでしょう。なぜなら、大衆が自分たちの真実、国に対する見解、政治参加に対する提案を全国人民代表大会に持ち込むことを恐れているからです。立候補しようとした活動家が警察に暴行を受けて、大けがを負った例もあります。これまで、支持母体の支持を受けないで立候補し当選した市民は皆無でしょう」と指摘している。
習近平国家主席は9月中旬の全国人民代表大会(国会に相当)の会議で、「ある国が民主的かどうかは、投票権があるかどうかだけではなく、国民が『広く参加する権利』を持っているかどうかにもよる」と述べるとともに、「民主主義は全人類共通の価値であり、『中国共産党が常に支持してきた重要な概念』である」と強調している。しかし、ネット上では「中華人民共和国憲法には個人の自由や基本的人権は保障されているが、それは建前であることは習近平主席の言葉があくまでも建前であることからも分かる」などと書き込まれている。