駅伝シーズンが始まり、今年も1キロ3分を切る速さ(時速20キロ以上)で疾走していく学生たちの爽やかな襷リレーが見られるなか、選手たちの足下では大きな変化が起きていた。11月7日に開かれた全日本大学駅伝(愛知県・熱田神宮~三重県・伊勢神宮の8区間106.8km)で、トップ選手たちが履くシューズの中にナイキの最高級厚底靴が目立たなくなっていたのだ。
ナイキが最高の機能性(エネルギーリターン率)を謳う、カーボンプレート入り厚底シューズ「アルファフライネクスト%」を着用していた選手は、今年1月の箱根では区間賞受賞者10人のうち5人だった。それが、今回の全日本では9人(4区が同タイム2人)中3人。区間新記録を樹立した3人(1区、3区、6区)全員も別モデルで、うち2人はその前モデルとなる「ヴェイパーフライネクスト%」だった。ヴェイパーフライの発売は2年以上前だ。
メーカー希望小売価格3万3000円のアルファフライの、「型落ち」が好記録を達成したとあって、市民ランナーは「ランシューは2年もすれば半額以下になることもザラ。“速く走れる話題の靴”が安く買えるのではないか」と期待を寄せた。
しかし、実情は違う。実店舗からネット通販に至るまで、新旧モデルともに2万円を切らない高止まり状態。アルファフライは基本的に定価販売が続いている。スポーツライターが話す。
「アルファフライは学生駅伝でこそ着用する選手が減ったが、人類唯一のマラソン2時間切りを支えたインパクトは大きい。ヴェイパーもシーズンインの10月のパリマラソンで2時間4分21秒で優勝した選手が使用し、東京五輪のマラソンでも上位陣が採用するなど、アピールができている。
他社製品でも、区間新のヴィンセント選手(東京国際大)や世界のトップ選手が履いているアディダスの厚底シューズは、ハーフマラソンの現世界記録に貢献している。それでいて各社とも供給過多にならない。だから、高級ラインの厚底シューズの値段が下がらないのです」
なかなか手頃にならない「型落ち」。普段のランニングに投入したい市民ランナーにはもどかしい日々が続きそうだ。