不祥事や言動を問題視された政治家は、選挙中は有権者にペコペコするが、当選すれば「禊ぎは済んだ」と開き直るのが常だ。今回の総選挙でも、そういった問題議員が議席を確保した。
萩生田光一・経産相はコロナ自粛中に会合や飲み会を行なっていたことが批判され、梶山弘志・幹事長代行は経産相時代に持続化給付金の“中抜き問題”で監督責任を問われたが、いずれも総選挙では大差で勝利。
甘利明氏と同じように政治資金スキャンダルにまみれても、小渕優子・組織運動本部長は連続当選を重ね、今回は次点の3倍以上の得票で圧勝した。
「銀座豪遊3人衆」のうち、田野瀬太道・元文科副大臣だけは当選し、自民党に追加公認されて復党も決まった。こうしてコロナ失政や不祥事議員たちは生き残った。
いずれの選挙区も有権者の怒りがなかったわけではないだろう。共通するのは「落選運動」が効果をあげにくい選挙区という点だ。
小渕氏や梶山氏、田野瀬氏の選挙区は世襲で受け継いだ強い保守地盤であり、有力野党は“どうせ勝てないから”と候補者を立てない。有権者に選択肢を与えず、「落選運動」を妨害しているのは野党に責任がある。
比例単独で当選した議員にも「落選運動」の怒りの1票は届きにくい。
「(東日本大震災が)まだ東北で良かった」と発言した今村雅弘・元復興相は九州ブロックの比例名簿単独1位、「女性はいくらでもウソをつける」の失言女王・杉田水脈氏は中国ブロックの比例名簿順位19位で当選。安倍元首相の実弟、岸信夫・防衛相は党本部に、〈本候補(杉田氏のこと)の名簿上位搭載にご配慮をいただきますよう、強くお願い申し上げます〉と文書で申し入れていた(ジャーナリスト・相澤冬樹氏によるNEWSポストセブン既報)。政治学者の岩井奉信・日本大学法学部教授はこう話す。
「名簿順位が重複立候補する選挙区候補より下であれば、同じブロックの選挙区で落選させることで比例単独候補の当選可能性を下げることは可能だが、名簿上位の候補には通用しない」
だから名簿順位を上げてもらうために党内実力者の顔色だけをうかがい、有権者に心ない発言を続ける政治家が増えるのだ。
そんな議員には、同じブロックの選挙区候補を落選させ、比例単独候補を名簿上位にする余裕をなくさせるしかない。
※週刊ポスト2021年11月19・26日号