メジャーで活躍する菊池雄星、大谷翔平を輩出した岩手・花巻東に現われた3人目の怪物が、同校の佐々木洋監督を父に持つ佐々木麟太郎(16)だ。
入学から半年あまりで清宮幸太郎(高校通算111本)を上回るペースで47本の本塁打を積み重ねてきた左の強打者。身長183cmにして体重117kgというでっぷりした体格に加え、フルスイングでボールを捉えた時の飛距離は規格外である。
花巻東は秋季東北大会を制し、来春のセンバツ出場を確実にした。決勝で敗れた聖光学院(福島)の斎藤智也監督が話す。
「花巻東のグラウンドは広いですし、公式戦が開催される東北地方の球場はどこも東京の球場ほど狭くはない。1年生で47本はたいしたものです」
気になるのはやはり、その体型だ。現状は一塁しか守ることができず、東北大会では、走塁時のミスも目立った。
「せめて50mを6秒台で走れるぐらいに身体を絞れば、肩の力も上がり、結果としてスイングスピードもアップするはずです。体重の重みでボールを飛ばすのではなく、身体のキレで飛ばすようになれば、より大きく成長していくのではないでしょうか」(斎藤氏)
先日、引退した松坂大輔も横浜高校入学時はポッチャリ体型だった。松坂を育てた小倉清一郎氏(当時は部長)はアメリカンノックで松坂を走らせ、身体を絞り込んだ。
「投手の松坂より、筒香嘉智と比較した方がいいだろう。筒香も入学時は100kg近い体重があった。太っている選手が大成するかどうかは、インコース高めの速い真っ直ぐをいかに捌けるか、がカギになる。太りすぎていると、身体がスイングを邪魔することもある。野手である筒香には、10mから15mぐらいの距離を何十回と往復させるシャトルランを課して絞った。佐々木も107kgぐらいが理想の体型じゃねえかな」(小倉氏)
47本という通算本塁打数は紅白戦を含むため、いたずらに過去の怪物スラッガーと比較して「怪物認定」するのは性急だろう。だが、1年生ながらその体躯に見合うメジャー級の実力は見せつけている。
取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2021年11月19・26日号