法廷の場でついに真相が明らかに―─『週刊ポスト』のスクープで発覚した、相撲協会のパチンコ裏金疑惑に端を発した内部闘争が大詰めを迎えている。裁判で証言台に立った八角理事長(元横綱・北勝海)は、組織のガバナンスが崩壊していたことを自ら告白。九州場所初日を目前に、土俵外バトルが過熱している。
傍聴席に協会幹部がズラリ
10月29日、東京地裁103号法廷は異様な空気に包まれていた。
この日の公判は、相撲協会が原告となった損害賠償訴訟で、被告は協会の元顧問・小林慶彦氏と同氏が代表を務めたコンサルティング会社。
原告側の特別傍聴席には尾車事業部長(元大関・琴風)、芝田山広報部長(元横綱・大乃国)、春日野監察委員長(元関脇・栃乃和歌)という協会の最高幹部が居並ぶなか、緊張した面持ちで証言台に立ったのが、八角理事長だ。
そこでの証言は、現在の協会トップが、たった1人の“顧問”の力に怯えていたことを告白する内容のものだった。
「千代の富士さんは、小林に悪口を言われて(理事選で)足を引っ張られた」
「小林が私を悪く言って、“八角を使わないように”と北の湖理事長に進言するのが怖かった」
この裁判は、コロナ前は年間100億円を超える経常収益を誇った相撲協会で、組織のガバナンスが機能せず、取引業者との間で裏金が動いていたことを協会が自ら主張するという異色の展開を辿っている。
被告の小林氏はもともと、2015年に他界した北の湖理事長に重用された人物だった。2016年、八角理事長体制となった協会は小林氏との契約を解除。さらに翌2017年になって小林氏の在職中に背任行為があったとして、協会が損害賠償を求める訴訟を起こしている。今回の公判はその最終口頭弁論だ。
「協会側が小林氏の背任行為だと主張している主要な案件は2つあり、ひとつが両国国技館の改修工事を巡り施工業者から8000万円を受け取っていた問題、もうひとつは力士が登場するパチンコ台の契約を巡って仲介業者から1700万円が渡った問題だ。信用毀損による損害なども含め、当初1億6500万円だった損害賠償請求額は、提訴後に増額されて5億1000万円まで膨れあがった」(協会関係者)
つまりは北の湖理事長時代の組織の腐敗を八角理事長が追及するという構図の巨額賠償訴訟なのである。この日は八角理事長と小林氏本人が出廷。関係者の注目が集まった。
そして、北の湖理事長体制においても協会ナンバー2の事業部長などの要職にあった八角理事長が、実際には小林氏の言いなりであったと本人が認めるという衝撃的な主張が繰り広げられたのだ。