ライフ

名古屋遷都小説の著者・清水義範氏が語る「名古屋都民が誕生したら」

「名古屋幕府」を樹立を描いた『金鯱の夢』(著・清水義範氏)

「名古屋幕府」を樹立を描いた『金鯱の夢』(著・清水義範氏)

 織田信長なき後、豊臣秀吉と正室ねねの間に生まれた秀正が天下を統一し、「名古屋幕府」を樹立する──。こんな夢物語を描く小説『金鯱の夢』を1989年に出版したのは名古屋出身の作家・清水義範氏だ。

「前作の『蕎麦ときしめん』で名古屋文化をからかったので、『金鯱の夢』では思いっきり羽目を外して名古屋を持ち上げました。名古屋の汚名返上を試みた作品です」

『蕎麦ときしめん』で清水氏は「名古屋は閉鎖的な村落共同体」「名古屋人にプライバシーはない」など、転勤族が大笑いして頷く名古屋論を展開。『金鯱の夢』では、金の鯱をシンボルとする名古屋幕府が260年続き、名古屋弁が公用語となる「歴史のif」を描いた。

 同書刊行後の1990年代は現実の世界でも「名古屋遷都論」が世を賑わせ、金鯱の夢が正夢になるかもしれなかった。

「信長、秀吉、家康という天下人を生み出しながら、名古屋は一度も『王城の地』になれなかった。しかもオリンピックの誘致に失敗し、最初は豪州から名古屋にだけ来るはずだったコアラは東京と鹿児島にも寄贈されました(笑)。そうした鬱憤もあって名古屋遷都論が大いに盛り上がったのでしょう。ただし名古屋人はこぢんまりと自分たちだけでまとまるのが得意で東京にコンプレックスがあるので、遷都論をぶち上げながらも内心では、『ホントに都にはなれんわな』と思っていた気がします」

「首都名古屋」が誕生していたら、どうなっただろうか。

「真面目で堅実、合理性を好む名古屋人だけに、内心ではおっかなびっくり不安を感じながら、独自の価値観に基づいた首都を築いたかもしれません。ただし名古屋弁は仲間内ではコテコテでも相手が名古屋人でないと急に薄まるので、公用語になるのは難しいでしょうね」

※週刊ポスト2021年11月19・26日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン