力強く起こり立つこと──日本国語大辞典で「勃起」と引くと、こうある。つまるところ勃起力の回復は、陰茎の問題に留まらず、「生きるための活力」を取り戻すことに他ならない。世界各国でED治療薬の開発が進み、近年は、「塗るED薬」も登場した。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。
「2019年にイギリスで発売された『エロクソン』です。ニトログリセリンが有効成分で、ペニスに直接塗り込むことで血管が拡張し、7~8分で勃起する。塗るという手軽さと即効性から、医学界で注目されています」(室井氏)
効果の持続時間は30分程度とされており、行為の直前に塗り、終われば鎮まる。長時間の“連戦”には向かない短期決戦仕様となっている。イギリスの臨床医はエロクソンの性能を紹介しており、「塗布すると最初に冷却感があり、その後熱を帯びてくる」「亀頭を中心に膨張を感じる」などと説明している。
エロクソンを開発した製薬会社は、2011年にコンドームの先端に血管拡張作用のあるジェルを注入した『CSD500』という製品を発売しており、イギリス国内で“バイアグラコンドーム”の通称で話題を呼んだ。
今年4月、エロクソンがEUで医薬品として認可された。安全性が認められれば、日本にも上陸する可能性が高いという。
「ただしニトログリセリンは心不全の薬としても有名で、血管拡張効果がある3大ED治療薬(※「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」)との併用は避けた方がよい。また性交時の女性への影響を考えると、コンドームは必須など条件が付く可能性はある」(同前)
現状で、一部の医療機関や通販を利用すれば、海外のED薬を入手することは可能だ。だが国内未承認のED治療薬を使用する際は、十分に気をつけたい。室田医師が語る。
「海外のED治療薬は国内に比べて不衛生な製造法で粗雑に生産されることがあり、偽物が国内に入るリスクがあります。また重篤な副作用が出た際に、国の救済措置の対象外になり、健康被害が生じても自費で対応する必要があります」
※週刊ポスト2021年11月19・26日号