今年、生誕75周年になる大原麗子さんが出演した映画『新 喜びも悲しみも幾歳月』(1986年 監督/木下惠介)は、一家が転勤を繰り返しながら全国の灯台をめぐる物語でもある。映画で大原さんが暮らした灯台のなかから4か所をめぐる。
【あらすじ】
灯台守夫婦の愛と労苦の歩みを描いた1957年の大ヒット作を名匠がセルフリメイク。加藤剛と大原麗子が夫婦役を演じる。灯台から灯台へと転勤するたびに山梨から訪ねてくる老父(植木等)との関係を軸に、ユーモアを交えながら、1973年から13年間の家族愛を描く。各地の灯台の雄姿と名所旧跡も見どころで、あの有名な主題歌も懐かしい。
●石廊埼灯台(静岡県)
1975年に赴任した灯台は伊豆半島最南端に立つ。内部の一般公開は年2回だが、敷地は通年開放。灯台の先には石室(いろう)神社が鎮座する。
●経ヶ岬灯台(京都府)
1898年に丹後半島最北端に設置され、第1等レンズを使用した希少な灯台。映画は一家がここから石廊崎への引っ越し準備をする73年3月から始まる。
●八丈島灯台(東京都)
1980年、一家は八丈島に。円形灯台は島内最東端、石積ヶ鼻の高台にそびえる。
●恵山岬灯台(北海道)
一家は八丈島から函館の官舎へ。この灯台は1890年に設置。周辺は現在、公園に。
真面目で口数が少ない夫に対し、大原演じる妻はお喋りで明るい。突然訪ねてきては面倒をかける義父に嫌味を言いつつも世話を焼き、灯台守の妻は我慢の連続だと夫に愚痴りながらも「お喋りだった私が無口になっちゃった」と笑わせる。八丈島灯台を眺めて夕涼みをしながら夫が父親と一緒に暮らしたいと告げる場面は一大クライマックス。大原は長台詞で最高の演技を見せ、観る者に「こんな妻が欲しい」と思わせる。
(一部敬称略)
写真提供/大原政光
※週刊ポスト2021年11月19・26日号