度重なるスキャンダルで経営が混乱しているところにコロナ禍が追い討ちをかけ、まさに崖っぷちと言うべき状態にあった日産自動車が復調の兆しを見せている。果たしてこのまま本格的な業績回復に持ち込むことができるのか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。
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11月9日に発表した日産自動車の2021年度中間決算は黒字転換。年度末の業績予想についても本業のもうけを表す営業利益を従来の1500億円から1800億円へと上方修正した。7月に発表した最初の3か月決算に続くポジティブサプライズである。
日産が本当に復活路線に乗ったと言える状況にはまだ程遠い。決算の中身を見ると、クルマの販売については赤字を脱し切れておらず、それを潤沢な利益を出している販売金融事業がカバーしている格好だ。
だが、日産の今のステージは言わば“生き残るための戦い”。どういう形であれ少しずつでも黒字を出し続けられれば、商品開発の面でも起死回生の一発を狙わなければという余計なプレッシャーが薄まり、落ち着いたクルマづくりができるようになる。このささやかな好循環を変な不祥事や経営判断のミスで崩さないことが肝心と言える。
ネックは足下の日本事業
日産のグローバルビジネスで最もパフォーマンスが良いのはアメリカで、半年で1868億円もの営業利益が出ている。売上高は2兆94億円なので、利益率も9.3%と非常に良好だ。
それに対して最も状況が悪いのは何と足下の日本事業で、半年で924億円もの赤字を計上している。ここを高収益とまでは言わずともせめてブレイクイーブンに持っていける状況を作れれば、本格的な業績回復に持ち込むことができるだろう。
日本事業がグローバルの足を引っ張るという構造はホンダとまったく同じだが、日産はホンダが金づるとしているアジアが弱い。その分まで日本でのビジネスを頑張らなければいけない立場なのだ。
が、今の日本市場はトヨタの強さが際立っており、他メーカーはその間隙を縫うのにも一苦労するという有り様。日産の日本事業がダメと言っても、現状の薄いラインナップを見るとまあまあよく戦っているほうだ。