“行きたくない街”ランキングで上位に入ることもある名古屋。しかし、ファッションの分野では、名古屋ならではの流行を生み出している。たとえば「名古屋巻き」も、そのひとつだろう。
「名古屋巻き」は愛知県出身の美容家・土屋雅之氏が2000年頃に考案し、女性ファッション誌で紹介され全国的に広まったとされる。当時は太い縦巻きカールで肩下から内側に髪を巻いた人気モデルが雑誌の表紙を飾り、巻き髪は“綺麗なお姉さんの象徴”だった。
2000年代後半、人気キャバ嬢を読者モデルとした『小悪魔ageha』で、より派手さを増したスタイルが紹介され人気を集め始める。名古屋出身で芸能事務所を営むヒデポン氏が解説する。
「髪をくしで束にしてすくい取り、スプレーで固め、アメ細工のカゴのように組み、細い髪束を幾重にも重ねあわせた“スジ盛り”という髪型です。ど派手好きな名古屋嬢らしく、より高く、横にも広く仕上げるヘアスタイルでした」
名古屋の老舗有名店「アールズカフェ」に在籍する神崎のあさん(27)は、18歳当時、まさにスジ盛りブームで思春期を過ごした。
「当時は髪に針金を仕込み、久屋大通公園に立つテレビ塔のタワーみたいな形に盛ったお姉さんもいました。目立ってナンボのサービス精神があったと思います」
キャバクラを引退し、名古屋市内の企業で事務職として勤める女性はこう言う。
「今やキャバ嬢はミニスカのドレスが主流ですが、当時はロングドレスにスジ盛り巻き下ろしでクルクルに巻いて出勤してました。毎日スプレーでガチガチに固めるから、髪を洗うのも一苦労。髪も傷むし大変でした。それでも毎日出勤前にセットサロンで髪をキメて行くのが名古屋キャバ嬢としてのプライドでしたね」
では、昨今の名古屋キャバ嬢の間では、どんな髪型が流行っているのか。前出の神崎さんに見せてもらうと、今の髪型は「ゆるふわ巻き」程度。かつての“盛り髪”は鳴りを潜めてしまったのか?
「今の時代に、当時ほど巻き上げていたら変でしょう(笑)。これが名古屋嬢の“令和スタイル”ですよ」
髪型は落ち着いても、トークの“サービス精神”に名古屋嬢の精神が受け継がれている、のかも?