かつては「老老介護」といえば、自宅で高齢の親を介護する高齢の子供、といった関係性を示すことが多かった。ところが、最近では高齢の介護士が高齢者を介護する事例が増えているため、「老老介護」という言葉は別の問題を示す言葉になりつつある。介護労働に従事する人のうち65歳以上は12.3%を占め(介護労働安定センター調べ)、今後も増加傾向にあると言われるなか、どんな問題が生まれているのか。ライターの森鷹久氏が、新しい老老介護問題についてレポートする。
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大阪市の老人ホームで、痛ましい事件が起きた。
入居者の男性(72)が敷地内で倒れていると通報があり警察が駆けつけたところ、男性とは別に職員の女性(68)が事務所内で頭から血を流して倒れているのが見つかった、というものだ。捜査はまだ途中ではあるものの、入居男性はトラブルを起こしたため退去することになっていたということも報じられていて、入居者が職員に危害を加えた後に自殺した可能性が高いという。
たった4歳しか年齢が変わらないのにも関わらず、片や介護を受ける側、方や介護をする側、となっていることに驚く人も少なくないかもしれない。だが、超高齢化社会の我が国では、あちこちで老人が老人の介護をになう「老老介護」から逃れられない人々が増加し続けている。
そして、特に老人介護施設における「老老介護」の現場では、それぞれの立場が発端となりさまざまなトラブルが頻出しているという。
「シニアと呼ばれる60代、そして70代の介護スタッフが増えています。人手不足の中では助かっているのですが、今度は入居者と高齢スタッフの間で起きるトラブルが目立つようになってきました」
こう話すのは、埼玉県内で入居型老人ホームを運営する佐々木祥子さん(仮名・50代)。高齢スタッフの中には「ボケ防止」とか、いつまでも働きたいという思いから就労に至る人もいるが、ほとんどは「生活費」を作ることが目的。貯金や年金では心許なく、高齢になっても働かざるを得ない、という人が多いのが現状なのだという。
「入居者の方は比較的お金に余裕のある方ばかりということもあってか、入居者の一部の人が高齢スタッフにとにかく尊大で、貧乏人と詰ってみたり、かなり見下されているのです」(佐々木さん)