引退しても“横綱級”の注目度だ。9月の秋場所後に引退を表明して年寄「間垣」を襲名した元横綱・白鵬。九州場所初日の11月14日には、左胸に〈日本相撲協会〉の刺繍が入った青いジャンパーを着て、警備担当の親方として“本場所デビュー”した。
「会場となる福岡国際センターには理事室や巡業部、審判部などの部屋があるが、警備担当の親方衆は待機するための中部屋が与えられているだけ。優勝45回の大横綱であっても、まずは一兵卒として場内警備をするのがしきたりです」(担当記者)
十両の取組が始まると支度部屋で八百長行為がないかの監督業務にあたり、幕内後半では西花道で館内警備にあたった。NHKの中継では花道の奥にいる姿が何度も登場。
「コロナ禍で出稽古ができなかった影響か、土俵上では淡白な相撲が目立った。特に大関・正代は熊本出身でご当地力士ながら、元気なく大栄翔に押し倒しで敗れて初日から黒星。そんな情けない大関より白鵬のほうが目立っていた」(若手親方)
初日の打ち出し後の「お楽しみ抽選会」では、正面で当選者に商品を渡す係を担当。当選者と記念写真に応じるなどした。
「さすが白鵬というか、通常は帰りを急ぐ人がほとんどなのに、あっという間に人だかりができた」(前出・担当記者)
貴乃花や稀勢の里(現・荒磯親方)ら人気横綱も、引退後はまず警備の仕事を担当したが、今回の注目は「来年2月の理事選後の人事」だという。
「毎年3月場所後には次の職務分掌が決まり、顔が売れている元横綱や元大関はそこで記者クラブ担当や、ファンの目に触れるモギリ(木戸係)や審判部となるケースが多い。ただ、協会執行部は現役時代の素行を問題視して“白鵬にはしっかり雑巾がけからやってもらう”というスタンス。4月以降も地味な役回りが続くかもしれない。白鵬がそれをどこまで我慢できるか。今場所の12日目には朝青龍が甥っ子(豊昇龍)の応援で来場するというが、その対応で“警備員”の白鵬が汗をかくことになりそうだ」(協会関係者)
一兵卒として、どこまで頑張れるだろうか。
※週刊ポスト2021年12月3日号