北朝鮮では昨年初め頃より、中国などでの新型コロナウイルスの感染拡大による自衛策として、国境封鎖や対中貿易の停止などで食糧事情が急激に悪化しているが、貧窮した市民の間で、高性能のプリンターを使った偽札作りが横行していることが明らかになった。主に5000ウォン(約600円)や2000ウォン札が主だが、「流通紙幣の約1割が偽札」との見方も出ている。
金正恩朝鮮労働党総書記は「偽札の流通は国家経済の破壊につながりかねない」と憂慮しており、「偽札作りは反社会主義者の行為であり、国家の裏切り者」と激しく批判して徹底的な取り締まりを指示し、高性能プリンターやコピー機などの取り締まりを強化している。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮で最初に偽札が発見されたのは昨年9月で、首都・平壌市内の一般の市場で偽5000ウォン札を使用した男2人が逮捕された。2人は出版社に勤務し、デジタルプリンターを使って偽札を印刷し、偽札と分からないように、夜間に客が少ない屋台などで使っていたという。
2人は警察の取り調べで、新型コロナウイルスの感染拡大で、経済事情が悪化し、食糧が乏しくなったため、会社にあるデジタルプリンターを使った偽札作りを思いついたと供述しているという。
この事件が口コミ情報で流れると、北朝鮮国内で同じような事件が頻発したという最も安直なケースは市販の小型プリンターで紙幣をコピーしたものだが、市場の店員が真札と手触りの感触が違うことから、偽札と見破り、犯人は逮捕された。
その後も北朝鮮国内で偽札の発見は相次ぎ、政府は今年1月以降、毎月数百枚の偽5000ウォン札を発見。次第に、2000ウォン札や1000ウォン札、500ウォン札などにも偽札が混じるようになってきた。特に、偽札が多数発見された北朝鮮東部の咸鏡北道では、当局が「非常事態宣言」を発令したという。