大相撲九州場所12日目の11月25日、会場である福岡国際センターに元横綱・朝青龍のダグワドルジ氏が現われた。中入り後半が始まる前に夫人を伴って入場し、西の桝席に座って甥っ子の豊昇龍の相撲を観戦した。かつての“お騒がせ横綱”はこの日の観戦をツイッターで予告していただけに、相撲協会サイドは“厳戒態勢”で当日に臨んでいた。
入場してしばらくは、マスクと黒縁メガネ姿で周囲もすぐには気づかなかったが、NHKの大相撲中継のカメラが観戦する姿をとらえ、報道陣のカメラのレンズが向けられると場内はざわついた。元・朝青龍自身もリアルタイムで「久々」とツイートし、目の前で豊昇龍が大栄翔に押し倒されると「素晴らしい負け」と皮肉交じりの投稿を続けた。
打ち出し後、会場前の路上で相撲担当記者の囲み取材に応じ、豊昇龍について聞かれると「剣道のあれ(竹刀)でケツを2~3発入れてやりたいよ。ま、それをやっちゃいけないけどね(苦笑)。もっとガッツを入れてほしい。1人の一匹狼になれよ」と叱咤激励。
引退した元横綱・白鵬(現・間垣親方)についても、会場内で会ったことを明かしたうえで「モンゴル語で“おめでとうございます”と言った。最後の最後で優勝した。お疲れ様よりおめでとうと言いたかった」とコメント。そのままタクシーで博多の街に消えていった。
スポーツ紙は各紙とも『元朝青龍ノリノリ独演会』『元朝青龍ほえた』 『おじさん(元朝青龍)怒』などの見出しで大きく報道した。元横綱が甥っ子の相撲を観戦し、同郷の後輩横綱をねぎらったという記事ばかりだが、実は相撲協会はこの日に向けて戦々恐々としていた。協会関係者が語る。
「朝青龍が事前にツイッターで12日目の観戦を予告していたことで、相撲協会は朝から対応に追われていた。協会ナンバー2の尾車親方(元大関・琴風)が陣頭指揮をとり、会場駐車場内にある会議用テントには親方衆や若者頭など30人以上集められました。
朝青龍が本場所にやってくるのは、2012年の春場所4日目にモンゴルのバトボルド首相と一緒に観戦して以来9年ぶり。この時はVIPと一緒だったことで騒ぎを起こさなかったが、その前年(2011年)の九州場所では観戦前に西支度部屋へ入り、モンゴル出身の日馬富士(当時大関)と談笑。八百長問題で支度部屋への部外者の立ち入りを厳しくしていた時期で、支度部屋の監視担当だった岩友親方(元前頭・栃勇=当時)が厳重注意を受けるなど、大問題となったことがある。再発防止のため厳しい警備体制が敷かれた」