9月に世界同時配信されるや爆発的人気となり、これまで世界94か国で1億4000万世帯が視聴したとされる韓国ドラマ『イカゲーム』(Netflix)。先行作品との類似ポイントが数々指摘されながら、なぜこれほどまでにヒットしたのか。映像業界に造詣の深い小説家の榎本憲男氏が、賛否両論渦巻く『イカゲーム』の核心をわかりやすく解説する。(以下は作品のストーリーに関する記述が含まれます。未見の方はご注意ください)
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Netflixで配信されている韓国ドラマ『イカゲーム』は、目を引くような大スターがメインキャストに配役されていないにもかかわらず、世界的に大ヒットしている。この作品の特異性について書いてみたい。
まず、ここまでの規模のヒットは、エンターテインメント性がないと達成できない。大ヒットは多くの人が純粋にこの作品を楽しんだことを意味する。なので、本作品を評価する者は、まずこの作品のエンターテイメント性を讃える。「面白い!」と。
ただ、このような賞賛の影に、本作品が日本のある種のコンテンツに似ていることを指摘し、その勢いで「独創性に欠け、たいしたことがない」と評価する人がいる。では、『イカゲーム』は日本のコンテンツを模倣しているのだろうか? 「している」と僕は思う。しかし、そのことが本作品の評価を損なうことになるのかというと、「ならない」というのが僕の鑑定である。
日本のコンテンツのどの作品にどこが似ているのかを示すよりも、『イカゲーム』の物語設定をまず説明しよう。『イカゲーム』では、登場人物はほとんど全員“食い詰め者”である。彼ならびに彼女らは離島に集められ、大金の獲得を目指して、子供っぽいゲームを戦う。勝ち進めばどんどん大金獲得に近づくが、負ければその時点でゲームオーバーとなり、射殺される。このハッタリの効いた設定が、日本の一部のコンテンツと似ているというわけである。
このようなハードエッジな状況設定をし、それを原動力にストーリーを力強く押し進めていく作品をハリウッドでは「ハイコンセプト」と呼ぶ。そして、この「ハイコンセプト」という言葉はハリウッドのスタジオのエスタブリッシュメントが使うのと、辛口の評論家筋が使う場合は、若干ニュアンスが異なる。