中国東北部の山東省文祥県で、葬儀社の従業員が若い女性の遺体を火葬した後に遺灰をすり替え、息子の結婚相手を探していた女性に売ろうとしたとして、地元警察は11月上旬、窃盗などの容疑で3人を逮捕した。これは、中国に古くから伝わる迷信「冥婚」あるいは「鬼婚」といわれる儀式用のもので、未婚で死んだ人が死後の世界で寂しくないように、「伴侶」を与えるために行われている。中国ではいまだに各地で、このような儀式が行われて、まれに悲惨な犯罪事件が発生することもある。
中国紙「北京新聞」によると、死亡した女性は20代のライブストリーマーで、数カ月前から精神的な病を患っており、今年10月、視聴者の前で殺虫剤を飲んで自殺したという。
これに目を付けたのが葬儀社の従業員で、以前から未婚の息子のために嫁を探している女性から「『冥婚』で結婚する女性の遺骨を探してほしい」との依頼を受けていた。その報酬として、最大で7万元(約126万円)を約束していたというが、その女性は「相手の女性が自殺ではだめだ」と言って、受け取りを拒否したうえで、警察に通報したという。
死亡した女性の遺灰は回収され、中国中部の湖南省に住む女性の親元に戻された。
この事件を受けて、山東省政府民政局は「冥婚」の取り締まりを強化し省内の葬儀施設に対する検査を開始した。
冥婚がからむ犯罪が明らかになるのはこれが初めてではない。中国・陝西省の警察はこのほど、知的障害のある女性2人を殺害したとして男3人が逮捕している。いわゆる「冥婚」用に遺体を売るのが目的だったという。
また、冥婚の花嫁にするため女性の遺骨が墓から盗まれたという報告は近年も相次いでいる。2015年には山西省の村で女性14人の遺骨が盗まれており、当時の値段で1人につき3万~5万元(約48万~90万円)だったが、現在ではその値段が急騰しており、1人10万元(約180万円)になっているといわれている。
冥婚による遺骨や遺体が盗まれる事件が絶えないのは、中国に一人っ子政策の影響で、結婚適齢期の男性人口に比べて女性人口が少ないためだ。中国政府は今年、一人っ子政策を正式に廃止したが、男女のいびつな人口比率は当分、変わらないことから、「冥婚」がなくなることは難しそうだ。