芸能

中村吉右衛門さんが語っていた「歌舞伎の文化を次代に伝える覚悟」

「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表にて(2005年)

「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表にて(2005年)

 歌舞伎俳優で文化功労者、人間国宝の中村吉右衛門(本名・波野辰次郎)さんが11月28日、死去した。77歳だった。歌舞伎の舞台での活躍はもちろん、人気ドラマ『鬼平犯科帳』の火付盗賊改方長官、長谷川平蔵役を長年にわたって演じ、人気を博した。

 八代目松本幸四郎の次男として生まれ、母方の祖父である初代中村吉右衛門の養子となり、1948年に中村萬之助を名乗って初舞台を踏んだ。1966年、二代目中村吉右衛門を襲名。以後、「毎日が初日」という初代の座右の銘を胸に、第一線で活躍し続けた。

 2011年に人間国宝となった中村吉右衛門さんは、国際情報誌『SAPIO』(2014年2月号)のインタビューに答え、歌舞伎が持つ日本文化の魅力と、それを時代に伝える覚悟についてこう語っていた。

〈播磨屋の人間として私の役割は初代の演出を受け継ぐことがまず一つ。そして初代が築いた役者としての気構えを継承し、さらに次代へと手渡すことが歌舞伎という伝統芸能に携わる自分の責務です。

 その時代ごとの役者たちが代々研鑽を重ねてきたものを、我々がより良いものにして手渡さなければならないわけです。ことに幕末・明治にかけては西洋に追いつけ追い越せという気運の中、歌舞伎は伝統を絶やすことなく、より上質な舞台芸術へと昇華した。その果実を我々の代で損ねたり絶やしたりすることは絶対あってはならない。

 伝統を繋いだ先人の志に照らせば、守るだけでなく、一層の高みに向けて攻めることが必要です。私も70年近く役者一筋にやってきてやっとそんな境地がわかり始めたように思います。単に芝居をやっていればいいわけではなかった。先人たちもおそらくそうで、舞台に染みついた血と汗と涙の結晶が現在の歌舞伎なんです〉

甥・十代目松本幸四郎と(2005年撮影)

甥の十代目松本幸四郎と(2005年撮影)

関連キーワード

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン