長かった自粛生活で意識や価値観が変化した。生活習慣も変わった。以前はあんなに楽しかった「飲みニケーション」は、もういらないという人が多いという。近づいてくる新たな変異株、オミクロン株にも恐れながら、外飲みをやめる人たちが増えている──。
コロナ前は半ば常識だった「会社の飲み会」への不満が高まっている。都内在住の40代信用金庫勤務の女性が憤る。
「コロナ前は職場の飲み会は仕事の潤滑油になると思っていたけど、全然違っていた。コロナ禍で飲み会がなくなっても支障がないこともわかったし、むしろ精神的に楽になったんです。
これまでは仕事だからがまんしなくちゃと思っていたけど、上司の面白くないオヤジギャグに愛想笑いし、子供の自慢話に“すごーい!”と大げさに相槌を打つなんて、もうアホらしくてできません。人生であれほどくだらなくてもったいない時間はなかったと思います」
今年10月に行われた日本生命保険の最新調査では、日本企業の潤滑油とされた「飲みニケーション」を「不要」とする人が6割を超え、初めて「必要」の割合を上回った。
北海道在住の40代女性教員も、以前は職場のみんなと飲みに行くことがストレス解消になると思っていたという。しかし、コロナ禍になって飲みに行くことがストレスだったと気づいた。
「聞きたくもない他人の愚痴を聞いたり、酔っぱらいを介抱するのはもうたくさんです!」(40代女性教員)
いま、彼女は家でクラシック音楽を流して、美術関係の本を読みながらワインを飲むのが最高に幸せだという。
コロナ禍は職場以外の人間関係の整理にもつながった。子供を都内の私立中学校に通わせる50代主婦が安堵の表情を浮かべる。
「以前は息子のママ友らと頻繁に飲みに行っていましたが、コロナ禍になってから本当に仲のいい人としか連絡をとらなくなりました。そのとき、私ってなんとなくつきあっていた人が多かったんだなって思いました。
そんな人たちとわざわざお金を出してまで過ごすのがバカらしくなりました。友達の数は減りましたが、本当に仲のいいママ友とはつながっているので、いまでは吹っ切れてすがすがしい気分です」
今後の外飲みはどうなるか。東京女子大学教授(情報社会心理学)の橋元良明さんが指摘する。
「“家で過ごす”ことに価値を見出す人が増加する一方、日本は賃金が上がらなくて自由に使えるお金が年々少なくなっています。そうした価値観や懐具合の変化から、新型コロナが小康状態になっても外飲みの機会は確実に減ります。また、コロナ禍で飲みに行かなくても問題ないとわかった以上、わざわざ飲みに行きたくないとなるのは道理です」
オミクロン株の到来も相まって、今年は街が静かな年末になりそうだ。
イラスト/黒木督之
※女性セブン2021年12月16日号