国内

鉄道内事件、模倣犯が多発 コロナ禍の不景気が犯行意欲を後押しする危険も

京王線で犯行に及んだ服部恭太容疑者(25才)は、殺人未遂などで11月22日に再逮捕された(共同通信社)

京王線で犯行に及んだ服部恭太容疑者(25才)は、殺人未遂などで11月22日に再逮捕された(共同通信社)

 2015年6月、神奈川県を走行中の東海道新幹線のぞみ号の車内で、71才の男がガソリンをかぶって焼身自殺した。巻き添えになった52才女性が亡くなり、28人が重軽傷を負った。2018年6月、同じく神奈川県を走行中ののぞみ号で22才の男が女性客をナタで切りつけ、止めに入った38才男性を刺殺した。

 そして、今年8月には東京都世田谷区を走行中の小田急線車内で36才の男が乗客10人を包丁で切りつけ、サラダ油を床にまいて放火を企む事件が発生。さらに10月、東京都調布市・国領駅付近を走行中の京王線特急内で、24才の男が72才の乗客の胸をナイフで刺し、まき散らしたライター用オイルに火をつけた。多くの乗客が悲鳴を上げて逃げ回り、18人が重軽傷を負った。

「日本の電車の安全神話は、完全に崩壊しました」

 元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平さんはそう指摘する。

「一連の事件の犯人はみな自暴自棄になり、『おれはこれだけのことをやるんだ』という承認欲求が強かった。しかも危険なことに、こうした事件が起こるたび『自分も大きなことをやってのけたい』と模倣犯が続きます。実際に京王線の事件の犯人は、今年8月の小田急線の事件を参考にしたと供述しています。

 2008年に起こった秋葉原連続通り魔事件など、数年前までは無差別殺傷事件は屋外の人通りが多い場所で発生するものでしたが、いまは電車内が模倣犯たちの“トレンド”になったといえるでしょう」

京王線の死傷事件に遭遇した乗客は、緊急停車した電車の窓から脱出した(共同通信社)

京王線の死傷事件に遭遇した乗客は、緊急停車した電車の窓から脱出した(共同通信社)

 総合危機管理アドバイザーのおりえさんも、模倣犯はまだ現れる可能性があると呼びかける。

「国内での犯罪件数のピークは2002年の285万件で、以降は年々減少し、昨年は約61万件でした。犯罪の件数は大幅に減っているんです。しかし、小田急線や京王線の事件が連日大々的に報道され、それに刺激されて真似したいと考える者が後を絶たない。そのため、電車内での事件が増加してしまうのです」

 京王線の事件直後の11月、東京メトロ東西線で50代の男が乗客を工具で脅して逮捕された。また熊本県でも、走行中の九州新幹線の車内に液体をまき、ライターで火をつけた60代の男が取り押さえられた。この男は「京王線の事件を真似た」と供述した。

 にわかに緊張感が高まるのは、この年末年始だ。防犯対策専門家の京師美佳さんが指摘する。

「例年、年末年始は犯罪が増えます。さらに今年は、コロナ禍の不景気が犯行意欲を後押しする危険も高い。犯人の中には、正月にはおせちが出て、『3食寝床あり』の留置所で年末年始を迎えたいからと、逮捕覚悟で犯罪に走る者もいます。いまの時期、電車やバスなどの密室には、痴漢やスリ、通り魔など大小さまざまな犯罪者が出やすい。年間で最も注意が必要です」

※女性セブン2021年12月16日号

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン