「多剤併用」は身体への負担が大きいため、「薬を減らしたい」という人も多いだろうが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。そこで普段、患者に薬を処方する立場にある名医に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。
コレステロールや中性脂肪の数値が高くなる脂質異常症の治療薬で、多くの患者が飲んでいるスタチン系薬。しかし、内科医の水野雅登医師は「スタチンは安全性の高い薬として知られているが、地味な副作用があり、それが意外とつらいこともある」と語る。
「私はLDLコレステロール値が基準値以上の220mg/dlになったことがあり、一時期スタチンを服用しましたが、不眠症になりました。添付文書にも記載があり、薬をやめると眠れたので、副作用だとわかりました。
糖質制限をしつつサプリを摂取したところ、薬を飲まずに数値が基準値以下の120mg/dlまで下がりました」
水野医師は糖尿病治療薬のSU薬も飲みたくないという。
「膵臓のベータ細胞からインスリンの分泌を持続的に促す薬ですが、24時間効果が継続するために血糖が下がり続け、食事量が少ないと低血糖を起こして倒れる可能性があります。食間に空腹感が増して食事量が増え、肥満や高血糖になり、さらにSU薬の処方量が増え……という負のループにも陥りやすくなる。
現在は同じ作用でもベータ細胞に負担をかけない種類の薬があるので、限定的な状況以外では使用するべきではないでしょう」
※週刊ポスト2021年12月17日号