歳を重ねるごとに重くのしかかってくる“多剤併用”の問題。厚生労働省によると、75歳以上の4割以上が「5種類以上」の薬を飲んでおり(2020年)、加齢により薬の代謝などの機能が衰え、体内に留まりやすくなる高齢者ほど多くの薬を飲んでいる現実がある。
多剤併用は身体への負担が大きいため、薬を減らしたい人は多いだろう。だが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。そこで普段、患者に薬を処方する立場にある医師に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。
腰や膝、筋肉などに痛みがある時や、発熱時に服用する機会が多い解熱鎮痛薬。市販薬としても流通するロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナクナトリウムなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、その効果の高さから処方を求める患者が多い。
しかし、国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師は、消化器内科の立場から副作用の問題を指摘する。
「昔から非ステロイド性抗炎症薬は副作用のNSAIDs潰瘍(胃潰瘍)を起こすことで知られています。
薬の作用で炎症が少なくなる反面、胃の粘膜が傷付きやすくなる。腰痛などで処方されたロキソプロフェンを飲み続けた高齢の患者さんが、腹痛を訴えて来院したこともある」
また、厚労省は2016年、同薬の添付文書の「重大な副作用」に〈小腸・大腸の狭窄・閉塞〉を追加するよう指示を出している。
「厚労省によると、3年間で5人に副作用と見られる腸閉塞などの症状が出たそうです。死亡例はないものの、因果関係が否定できないとされる。
今後、もし必要なら、私は同じ解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン製剤を服用するつもりです」
※週刊ポスト2021年12月17日号