日本の鉄道の安全神話が脅かされている──。2015年と2018年には東海道新幹線のぞみ号で死亡者が出る事件が発生。今年8月には小田急線で、10月には京王線で刃物を持った男による傷害事件が発生した。密室で身を守る方法は存在するのか? 防犯対策専門家の京師美佳さんは、危険な目に遭わないようにするには、電車に乗る前から不審人物を見分けておくことだと語る。
「通り魔は予測不能なので対策のしようがないと言われがちですが、すべての犯罪には、『不審な人には近づかない』という予防の原則があります。挙動不審、キョロキョロしている、独り言を言う、公然とマナー違反をしているなど、明らかにおかしいと感じる人には近づかないこと。
特に、いまから犯罪を行おうとしているような人物は、目が血走っていたり、ターゲットを探すため不用意にウロウロしているケースが目立ちます。ホームで電車を待っているときから、周囲を見渡し、こうした怪しい人がいたら同じ電車や同じ車両に乗ることは避けましょう」(京師さん)
総合危機管理アドバイザーのおりえさんも同意する。
「コロナ禍でみんなマスクをしている中でも、帽子やマスクで異様に顔を隠している人は疑った方がいい。さらに、刃物で切りつけたり、放火することを計画している模倣犯は、必ず道具を持ち歩いている。場にそぐわないような荷物を持っている怪しい人がいたら、その場を離れるべきです。人間には第六感があるので、自分が“おかしい”と直感的に思ったところには近づかないことが正解です」
取り越し苦労だったとしても、慎重になって損をすることはない。また、怪しい人物が近くにいても、その場を離れられない状況になったときは「背中を見せない」ことを守りたい。
「重要なのは背後を取られないように気を使うことです。電車の中なら、ドアに背中をつけて怪しい相手に背中を見せないようにします。電車に限らず、エレベーターで人と乗り合わせたときも、側面の壁に背中をつけること。エレベーターの後方は、万が一襲われたときに出られなくなってしまうので、奥には行かないように。
ただ、マンションのエレベーターなどは、たとえ失礼な態度になったとしても、不審だと感じる人が乗り合わせてきたら降りることをおすすめします」(おりえさん)