不調を感じて病院を受診した際に、「とりあえず薬を出しましょう」と言われた経験を持つ人は多いのではないか。このような“とりあえず”の処方には注意が必要だ。薬には症状を緩和する効能などのメリットだけでなく、別の症状が生じる副作用もある。“とりあえず”で処方した結果、大きな副作用に悩まされるケースもあるのだ。
また、“とりあえず”の処方を重ねた結果「多剤併用」となってしまうことも考えられる。多剤併用は身体への負担も大きく、薬を減らしたいと考えている人も多いはず。だが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。
そこで普段、患者に薬を処方する立場にある医師に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。
「便秘外来」を開設する松生クリニック院長の松生恒夫医師(内科医)が、自らは服用を避けたいというのが、アントラキノン系の便秘治療薬だ。
「センナやダイオウなどアントラキノン系の下剤はあまり飲みたくないです。一時的に飲むのは問題ないし、妊婦さんも飲める安全な薬ですが、1年以上に及ぶような長期の服用により、大腸の粘膜が黒く変色する大腸メラノーシス(大腸黒皮症)が出現することがあります。
便秘状態をさらに悪化させる可能性が指摘されており、下剤の常用が腸管運動を低下させ、さらに下剤の量が増える“下剤依存症”を生んでしまいます。日本の市販されている下剤の7割はアントラキノン系の下剤ですが、私なら、酸化マグネシウムを選びます」
また、向精神薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も注意が必要だと言う。
「このタイプの薬は便秘を引き起こす可能性があります。便秘外来の患者さんでSSRIを飲んでいる方には精神科の先生と相談して慎重に決めてもらうようにしています」
※週刊ポスト2021年12月17日号