12月7日、羽生結弦がまたひとつ年を重ねた。オリンピック2連覇という偉業を達成しながら、人類史上初の4回転アクセル成功までの道を模索し続ける27才は、残りの今シーズンをどう締めくくろうとしているのか。
新型コロナウイルスの新たな変異株がスケート界も襲おうとしているなか、彼に新たな試練が立ちはだかりそうだ。ロシアスケート連盟が国際スケート連盟(ISU)に対して、フィギュアスケートの採点ルールの変更を提案しているというのだ。
フィギュアスケートの採点法は、大きく「技術点」と「演技構成点」の2つからなっている。技術点はジャンプなど技の難易度に応じた「基礎点」と、技の出来栄えによって決まる「出来栄え点(GOE)」の合計で決まる。一方、「演技構成点」は「スケーティングスキル」「つなぎ」「パフォーマンス」「構成」「音楽の解釈」の5つの要素によって評価されるもので、「5コンポーネンツ」と称される。
「ロシアの提案は、『演技構成点』の変更で、この5つのうちの『つなぎ』と『音楽の解釈』の2つをなくし、評価の基準となる構成要素を3つに減らすというものです。演技構成点のなかでも、特にこの2つは演技の“芸術性”を担保する要素。もしこの案が採用されれば、フィギュアスケートの採点がより技の難易度を重視する方向に向かうことになる」(フィギュアスケート関係者)
その内容は大きく結果を左右するものだが、ISUは改正に前向きだという。
振り返れば、フィギュアスケートは、これまでに何度も採点基準が変更されてきた。元フィギュアスケーターの渡部絵美さんがいう。
「ロシア案が採用されるかどうかはわかりませんが、自国の選手をいかに優位にさせるか、同時にほかの国の強豪選手の成績をいかに下げるかというのは、ルール改正の流れのなかで常に行われてきたことです。当然ながら、そのたびに恩恵を受ける選手もいれば、不利になる選手も出てきました」
採点ルールがとりわけ大きな議論を呼んだのが、2010年のバンクーバー五輪だ。浅田真央(31才)は当時、五輪の舞台では1992年に伊藤みどりしか成功させたことのなかった難易度の高いトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)をショートとフリー合わせて3度も成功させたが、トリプルアクセルを決めなかったライバルのキム・ヨナ(31才)に約23点差で敗れ、銀メダルに終わった。その得点差に疑問を抱いた日本のファンも多かった。
浅田は直後のインタビューで、トリプルアクセルのポイントが、この採点システムで低すぎるのではないかという意見について聞かれると、こう答えた。
「採点については、何も言えません。でもこの五輪という舞台で、トリプルアクセルを3回成功させたことは、誇りに思っています」