関西学生野球リーグで「お荷物」扱いされてきた京都大学硬式野球部に、変革が起きている。甲子園のスターなど野球エリートが集う強豪私立大学を相手に互角の戦いを見せ、プロ注目選手も現われているのだ──。
0対0、7回無死二、三塁。この回からマウンドに上がった京都大学の3年生投手・水口創太(22)が投じた速球に、同志社大学の打者は空振り三振。その後、一瞬遅れて球場全体がどよめいた。電光掲示板に「152キロ」の表示が光っていたからだ。
10月3日に行なわれた京大vs同志社の一戦は、0対0の引き分けに終わったが、身長194センチの水口が放つ剛速球に、プロのスカウトは釘付けになった。
「152キロが出て、しかも投げているのが京大生。彼はこの春まで登板がありませんでしたし、こんなヤツがいたのかとびっくりしました。
まだまだ荒削りなところがあり課題も多いですが、身体の大きさ・手足の長さによるボールの角度は天性のもので、将来性の塊のような存在。当然、来季のドラフト候補に入ってきます」(近畿地区を担当する広島カープ・鞘師智也スカウト)
京大野球部が所属する関西学生野球リーグは、関西大、関西学院大、同志社大、立命館大、近畿大と、プロ野球選手を多数輩出する強豪私学がひしめく。
そのなかで、京大は2009年から2012年に60連敗を記録するなど「お荷物大学」だったが、連敗を止めた投手の田中英祐(29)が2014年にロッテのドラフト2位で入団し、「京大卒初のプロ野球選手」として注目を浴びるなど、明るいニュースも出てきた。
「そして2021年の水口の登場です。田中の最速(149キロ)を凌ぐ“京大最速”として期待を集めています」(スポーツ紙記者)
なぜ力のある選手が、わざわざ京大で野球をやるのか。水口に聞いた。
「小さい頃から勉強の毎日でしたが、野球はずっと好きで。地元の滋賀県立膳所高校に進学しましたが満足する結果は残せず、上のレベルでやりたいと悔いが残っていました。大学で野球をやろうにも、私立大は入部時にセレクションがある学校が多く、入部すら難しい。顧問の先生に相談したら、『京大なら甲子園常連校の選手と戦えるぞ』と。そこで、京大に入るしかないと決めました」