「来年から大殺界だから」「やっぱりご先祖さまは大切にしないと……」。いま私たちが何気なく口にするこれらの言葉の出どころは、厳しくも温かい愛のムチでお茶の間を魅了した“彼女”だった。先行き不安ないま、背中を押してくれる“細木節”が恋しい──。
「あんた死ぬわよ!」「地獄に落ちる」。睨みつけるような厳しい表情で次々に放たれるセンセーショナルな言葉が、共演者を通り越し、お茶の間までも凍りつかせる。怖い、だけど耳を傾けずにはいられない……。
過激な「予言」を武器に、テレビの女王として君臨していた占い師・細木数子さんが83才で息を引き取った。
突然届いた訃報に、長きにわたり共演していたお笑いコンビのくりぃむしちゅーは「我々が生意気なことを言ってもいつも懐深く受け入れてくれた」と当時を回想し、カンニング竹山(50才)も「先生から教えていただいた多くの人生哲学は私にとって大切な宝物」と感謝を表明。公私にわたって親交があった元横綱の朝青龍も「私の日本の母親」とSNSで追悼の意を示した。各界から“細木節”を追想する声が上がる一方、彼女が占いの世界にもたらした大きな功績について、言及する人は少ない──。
占い師としては異端者だった
『Dr.コパの風水』『ゲッターズ飯田の五星三心』『星ひとみの天星術』……。占いや開運に関する多種多様な本が平積みになっているのは、年末の書店の風物詩だ。しかし、こうした光景は細木さんなしには得られないものだった。マーケティングライターの牛窪恵さんが解説する。
「細木さんが提唱した『六星占術』の登場は、占いのあり方そのものに大きな影響を与えました。かつて一般向けの占いは、星座、手相、血液型占いなど雑誌のワンコーナーや商業施設、街角にあるいわば“アミューズメント感覚”のものだった。内容も1か月など短期の運勢がメインで、人気は圧倒的に恋愛関連。それに対して『六星占術』は年単位で運勢を見るうえ、仕事や対人関係から自分のルーツまでテーマの幅も広い。今後どう生きるべきかの指針になるようなものでした」
「六星占術」とは生まれ持った運命を生年月日をもとに火星や土星など6つの星に分類し、その運勢を12周期に分けて占う方法だ。
実際に、細木さんが1985年に出版した『運命を読む六星占術入門』はベストセラーとなり、その後の著作も合わせると書籍の売り上げは累計1億部を超えている。
「占いといえば星座や血液型しか知らなかった私にとって、『運命数』や『星数』によって運勢が決まることや、『大殺界』など星の巡り合わせで浮き沈みが存在するという考え方は、とても新鮮なものでした。数字に基づいて自分の運勢を知ることができる面白さはこれまでの星占いやおみくじなどとは比べものにならないほど大きかったことをよく覚えています」(50代女性)