近年、世界各国と比較して、日本人の給料が上がっていない現実について取り上げられる機会が増えている。その原因の一つに挙げられるのが、日本人の労働生産性の低さだ。
たとえば、EU(欧州連合)の牽引役であるドイツと比較すると、双方の生産性は大きな開きがあるという。ドイツ在住20年以上で、近著『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』が話題のキューリング恵美子氏が解説する。
「OECD(経済協力開発機構)のデータ(2017年)によると、日本人の年間総労働時間は1710時間、ドイツは1356時間です。1日の労働時間を8時間とすると、日本人は年間44日もドイツ人よりも働いている計算になります。このデータには、記録に残らない『サービス残業』は含まれていないため、日本人の中には年間3000時間以上働いている人も少なくないと言われています。
一方、日本人の労働生産性(1人が1時間に生み出すGDP)は47.5ドル(約5225円)。ドイツ人は69.8ドル(約7678円)です。単純比較すれば、ドイツは日本の約1.5倍の生産性があると言えます」
言い換えれば、日本人は同じ成果を上げるにも長時間の労働を余儀なくされているということになる。
「残業・多忙=仕事ができない人」という価値観
日本でも働き方改革関連法が施行されて、長時間労働を是正する取り組みが進められている。しかし、その一方で、改革の“旗振り役”である厚生労働省をはじめとした中央省庁での長時間労働や残業代未払いなどの問題が明るみに出るなど、日本の労働現場では依然として理想とはほど遠い風潮が残っている。