12月8日、ロシアの宇宙船「ソユーズ」で宇宙に飛び立ったZOZO創業者の前澤友作氏。打ち上げから約6時間後、高度420kmで地球を周回するISS(国際宇宙ステーション)にドッキングし、目下、宇宙旅行を満喫中だ。
11日には自身のYouTubeチャンネルでISS内部の様子を配信。「(地球は)マジで丸いし、マジで青いです。本当に綺麗」「(夢が)本当に叶っちゃって感無量です」と、宇宙から見る美しい地球の姿に興奮を隠せない様子だった。
ISS滞在中は事前に募集した「宇宙でやってほしい100のこと」などにチャレンジ。恒例となった「お金贈り」も実施されるという。滞在は約12日間で、今月20日に地球に帰還予定だ。
約100億円もの私財を投じたとされる宇宙旅行だが、もちろん、100%の安全が保証されているわけではない。気がかりなのは、近年、ISSで予期せぬトラブルが相次いで発生していることだ。宇宙開発事情に詳しいジャーナリストの鈴木喜生氏が語る。
「今年7月には、(ISSにドッキングした)ロシアの多目的実験モジュールの姿勢制御装置が誤噴射を起こしました。搭乗員や地上制御を担うロシア連邦宇宙庁もコントロールができず、ISSが540度回転。約1時間にわたり制御不能の状態が続き、地上との交信も2度にわたって途絶えました。最悪の事態に繋がった可能性もある重大インシデントです」
このような事故が起これば、ISSとモジュールの接続部に破断や歪みが生じ、空気漏洩が起こり得る。また、回転が激しければ機体にGがかかって脱出用宇宙船のアンドッキング(離脱)も難しくなり、最悪の場合はクルーの脱出が不可能になる可能性もあるというのだ。鈴木氏が続ける。
「実際、2019年にはISSで空気漏洩が発生しています。後の調査で、発生源が居住空間や生命維持装置があるロシアのサービスモジュール『ズヴェズダ』にあることが特定された。前澤さんも使用するこのモジュールは、組み立てから35年以上経過しており、老朽化の影響が懸念されています」
1998年に宇宙空間での建設が始まったISSは、当初、想定されていた2016年までの運用期間を過ぎている。老朽化の問題はISS全体に及び、今年4月にはロシア副首相(防衛・宇宙産業担当)のユーリ・ボリソフ氏が「老朽化により取り返しのつかない結果になる恐れがある」との見解を示した。また、同国の宇宙開発企業担当者もISSに小さな亀裂が複数あることを認め、「修復不可能な故障が起こり得る」と警鐘を鳴らしている。
地球帰還時にも不安の種はある。今年10月、ISSからの帰還船として使用された「ソユーズMS-18」では、ISS離脱前にエンジンの異常燃焼が発生。ISSの姿勢を崩す事態に陥った。大事には至らなかったが、帰還船には、ロシア人の映画監督や女優など民間人が搭乗していた。原因は「人為ミス」と報告された。このような緊急事態発生時に宇宙のプロではない前澤氏が適切な対応をすることは可能なのだろうか。
「前澤さんは約100日間にわたり、緊急時のトラブルを想定した訓練を受け合格しているので、最低限の対処法は学習しているはずです。そもそも、命に直結するような事態はまず起こらないと考えますが、緊急時にプロの宇宙飛行士の手が回らない場合、前澤さんがどこまで冷静に対応できるかは未知数です」(鈴木氏)
無事の帰還を祈るばかりだ。