放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。73歳の高田氏が、89歳の野末陳平氏や84歳の山藤章二など、自分のまわりの先輩達についてつづる。
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暮れから正月、なにかと忙しくなるのが演芸人。そんな中、ナイツの塙は極私的プロ野球偏愛論と副題の付いた本まで出版。塙は番組を持つほどのプロ野球好き。自分は『アメトーーク!』でもおなじみの“運動神経悪い芸人”。やるわけではないが見る目だけは肥えている。
そこで出したのが『野球と漫才のしあわせな関係』(出版元がベースボール・マガジン社というのが本寸法。版元も洒落じゃないのが分かる)。塙が語り、野球本では実績のある長谷川晶一がまとめ、イラストはこの連載もつとめる佐野文二郎という布陣。高座では見せない熱き野球漫才愛。
お笑い芸人を野球人にたとえる章もあって「タモリは王貞治」説、「有吉弘行は前田智徳」説など結構読んでいくうちにうなずくものも多いが、なんたって私が嬉しかったのは「高田文夫は村田兆治」説。年をかさねてもどちらももの凄い球を投げるし、不屈の闘志でカムバックした。村田はジョーブ博士の執刀でみごと復活、私は心肺停止から不死鳥のごとくマイク前へと。この見立ては誰より私が勇気づけられた。
12月1日は浅草東洋館で私の漫才協会外部理事就任記念ライブ「漫才師の漫才史」。前売発売初日いきなり完売。当日はいっぱいのお客様。東洋館の人やら漫才協会の人が私に小声で「夜の浅草でも、こんなに人がいるんですネ」。
会長である青空球児(80歳)と好児(78歳)に私とナイツが昔の芸界の事をきくという主旨だったのが球児の若き日の武勇伝に爆笑。師のコロムビア・トップをしくじって名古屋に3年間逃げていたエピソードなど今ではコンプライアンス的にNO、駄目、NGの世界。前半をつとめてくれたロケット団、U字工事などタイトル通り「ザ・東京漫才」もまだまだこれから。