18歳以下への10万円相当給付を巡る岸田政権の対応が迷走している。クーポンを併用するという原則がなし崩しとなったうえに、一部自治体が独自財源で「所得制限なし」とする動きについても容認する構えで、混乱が拡大している。そして、混乱に拍車がかかるほどに、“不公平感”を抱く人たちの声が広がっている。
臨時国会前まで、岸田文雄・首相は18歳以下への10万円相当給付について、「5万円は現金、残りは5万円相当のクーポン」とし、「主たる生計者の年収が960万円以上は対象外(扶養家族が配偶者と子供2人のモデル世帯の場合)」とする所得制限を設けることとしていたが、国会論戦が始まるとなし崩しになった。大手紙政治部記者が言う。
「もともとは、貯蓄ではなく消費に回るようにクーポン給付を組み合わせるという話でしたが、現金とクーポンを併用すると約960億円の事務費がかかってしまうことが野党から追及された。大阪市の松井一郎市長をはじめ自治体側からも批判が相次ぎました。それを受けて、政府は自治体に向けた指針で、『5万円の現金+5万円のクーポン』『現金5万円を2回給付』『現金10万円を一括給付』のいずれかを選べるかたちにするなど、当初の方針を大きく修正せざるを得なくなりました」
所得制限に関しても、秋田県横手市や兵庫県小野市などが国の基準では対象外となる世帯にも、独自の財源を用いて給付する方針であることがわかると、政府は追認を余儀なくされた。山際大志郎・経済再生担当相は、12月14日の記者会見で「自治体が独自で財源を確保し、給付することを止めるものではなく、そうした自治体が出ていい」と述べた。
独自財源での対象外となる世帯への給付を決めた自治体の首長からは「すべての子供に公平に給付が行き渡るのが適切」といった声があがり、それに政府が押し切られた格好だが、結果として独自給付をしない自治体で対象外となる子育て世帯には不公平感が広がっている。
これまで独自に所得制限を撤廃する動きを見せているのは地方の自治体が多く、大都市にその動きは広がっていない。人口の少ない地方では、追加で給付対象となる「主たる生計者が年収960万円以上の子育て世帯」の数が限られ、調達すべき財源の額が膨れあがらずに済むからだ。100人に10万円給付を追加するなら財源は1000万円で済むが、追加の対象者が万単位になる都市部では何十億という予算を手当てしなくてはならない現実があるわけだ。
ただ、都内在住で2人の子供を育てる金融機関勤務の30代男性は「都市部で子育てをするほうがお金はかかるのに、地方の子育て世帯のほうが優遇されるというのは、フェアとは思えない」と不満を口にする。