新型コロナ禍は、日本人の働き方を大きく変えるきっかけとなったと言えるだろう。在宅勤務やリモートワークが一般的になり、都心から郊外・地方へ移り住んで、出社する日を大幅に減らしたという人も少なくない。
働きながら休暇を取る「ワーケーション(Work+Vacation)」や、若くして資産を貯めて早期退職する「FIRE(ファイア/Financial Independence, Retire Early)」といった生き方にも注目が集まった。
それらの動きも含めて、ようやく日本でも「ワーク・ライフ・バランス」に関心が高まってきたが、それでも“休み下手”な人は少なくない。その象徴の一つが、有給休暇の消化率の低さだ。
コロナ禍になる前の2018年12月のエクスペディア・ジャパンの調査によると、日本の有給休暇取得率はたった50%(20日のうち10日取得)で、調査した19か国のうち最下位。2020年はコロナ禍があって、世界中で渡航や移動に制限がかかり、旅行も思うようにできなかったため、世界的に有給休暇の取得にブレーキがかかったものの、日本は45%(20日のうち9日)の取得率で、やはり主要国では最低だった。
そんな日本と対照的なのが、“EU(欧州連合)の優等生”ドイツだ。2018年のドイツの有給休暇取得率は断トツの100%(30日のうち30日取得)。コロナ禍の2020年も83%(30日のうち25日)の高率だった。
気がねなく休むために「休暇仲間」をつくる
ドイツ在住20年以上で、近著『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』が話題のキューリング恵美子氏がその理由を解説する。
「ドイツ人は何のために働いているのか? その答えを一言で言うと、『休暇』のためです。『仕事と休日、どちらが大切か?』『仕事と家族や友人との時間、どちらが大切か?』『仕事と自分、どちらが大切か?』——これらの問いに、即座に『休日』『家族や友人との時間』『自分』と答えるのが、多くのドイツ人です。彼らは、仕事とは、幸せに暮らすための手段にすぎないと認識しています。
ドイツでは、人生を満喫することが一番の目標です。そのためには働く必要がある、というのがドイツ人の労働に対するイメージなのです」