「もしもし、おれ、おれだよ」──電話口のつぶやきから始まる詐欺の手口。いまや、役所の職員を名乗る訪問型、架空料金請求の手紙を送りつけるものなど、特殊詐欺は多岐にわたる。より巧妙になる詐欺犯たちに対抗するには、われわれは団結するしかない。
「千葉市の皆さん、特殊詐欺にご注意ください。『ATM』『医療費』『還付金』というキーワードは詐欺です!」
年の瀬も迫る12月3日、警察庁特別防犯支援官を務める伍代夏子は千葉県千葉市を訪れ、警察官の礼服姿でパトカーへ乗り込むと、街行く人々へ向けて特殊詐欺への注意を呼びかけた。
伍代は2018年より警察庁の「ストップ・オレオレ詐欺47〜家族の絆作戦〜」プロジェクトチーム(略称:SOS47)で活動している。この日は東京都内で警察庁特別防犯対策監の永久委嘱を受けている杉良太郎を筆頭に、伍代やTOKIOの城島茂、乃木坂46やAKB48グループのメンバーなど総勢11名で発足3年目の決起集会を行った。特殊詐欺撲滅への決意を表明した後に、メンバーが首都圏の1都3県に分かれ、広報啓発活動を展開した。
決起集会で杉が、「残念ながら被害件数はあまり変わらない」と険しい表情を見せたように、2020年の特殊詐欺の被害額合計は285.2億円で、依然として高い水準にある。喫緊の課題として全国的に特殊詐欺撲滅へ向けた取り組みが進んでいる。
とりわけ大都市圏での被害が深刻な問題とされ、2020年の統計は被害の多い順に東京・神奈川・千葉と続く。厳重注意地域にあたる千葉では特殊詐欺の実態を周知すべく千葉県警察が「電話de詐欺」のオリジナルの名称を用いて、広報啓発活動に励んでいる。
寒空の下、冒頭のように千葉市内を回って千葉県警に戻ってきた伍代に話を聞いた。
「特殊詐欺の電話は、ご高齢のかただけで住む自宅の固定電話へかかってくることがほとんど。皆さん、特殊詐欺についてはよくご存じで用心もされているはずなのに、しゃべる時間が長いとなぜか応じてしまう。詐欺グループの話術は巧妙ですから、『これは詐欺だ』と頭でわかっていても咄嗟に身を守るのは難しいんです」(伍代・以下同)
詐欺被害に遭いやすい高齢者が犯人と直に接触をしないよう、留守番電話や防犯機能付きの電話機を使って、電話へ出ないようにすることがシンプルで安全な対策ではある。
「そこが悩ましいところで……『電話をとったら最後』と警戒していただけたらいいのですが、ご高齢の皆さんは自宅へ電話がかかってくれば、『もしかしたらこれは大事な電話かもしれない』と思って、ついつい出てしまうんです。
特殊詐欺で“受け子”や“出し子”を担うのは若い世代が中心です。彼らも自分の祖父母を心の中で大事に思っているはず。まずは若者が犯罪に手を染めないように呼びかけて、自分の家族を想像し、日本のおじいちゃん、おばあちゃんを守ってほしいと訴えていきたいです」