昭和、平成、令和と、時代を超えて活躍してきた著名人の訃報が相次いだ2021年。人々に勇気や笑顔、そして、幸せを届けた彼らは、どんな言葉を残したのか。在りし日をよく知る人に、思い出に残る秘話を語ってもらった。
故・小林亜星さん(享年88)が手がけた曲に、ドラマ『裸の大将放浪記』(フジテレビ系)の主題歌『野に咲く花のように』がある。小中学校の音楽の教科書にも掲載されており、日本人の愛唱歌となっているこの曲を歌う夫婦デュオ、ダ・カーポの榊原広子(70才)と榊原政敏(72才)は、小林さんとの思い出を次のように振り返る。
「『野に咲く花のように』のほか、亜星先生が手がけられた企業や街のイメージソングを歌う機会がたくさんありました。スタジオでお会いする亜星さんはいつも物静か。歌に対する注文もなく、『きみたちが好きなように歌っていいよ』とおっしゃっていました。
地方のイベントにご一緒したときに、お豆腐ダイエットをされていたこともありましたね。食事会で『ぼくはお豆腐だけでいいから、皆さんどうぞ遠慮なく』と、お豆腐一丁にしょうゆをかけて食べていた姿が印象的でした」(広子)
小林さんは常日頃、作曲する上で、「覚えやすくて、長く人の記憶に残ることを目標に作っている」と語っていた。
「それは私たちも感じていました。先生の作られる曲はシンプル・イズ・ベスト。曲の音域も1オクターブ以内で、1回聴けばすぐに覚えられて、どなたでも歌えるメロディー作りを徹底しておられたのでしょう。決して口数の多いかたではなかったですが、その優しさは生み出されたメロディーによって確かに伝わっています。だからこそ、亜星先生の作品はいつまでも長く愛され、歌い継がれていくと思います」(政敏)
【プロフィール】
ダ・カーポ/フォークデュオ。現在は娘でフルート奏者の榊原麻理子とトリオを組み、シングル曲『あなたがいるから』が発売中。
※女性セブン2022年1月6・13日号