2021年は、著名人の訃報が相次いだ年でもあった。人々に私たちを励まし楽しませてくれた彼らは、どんな言葉を残したのか。在りし日をよく知る人に、思い出に残る秘話を語ってもらった。
走っているジープから華麗に飛び降りるなど、自ら体を張ってアクションに臨み、日本のアクション映画を切り開いた故・千葉真一さん(享年82)。後輩たちには「肉体は俳優の言葉である」と、常々語っていたという。
この言葉の真意について、ドラマ『キイハンター』(TBS系)で共演した谷隼人(75才)は次のように語る。
「千葉さんは言葉で具体的にアドバイスをするというよりも、体で表現する人でした。元体操選手で、学生時代は五輪代表を目指していたような人でしたからね。
『キイハンター』の撮影で、走っているジープに乗っているシーンでは『おい谷、飛び降りるぞ!』って、いきなり言われるんですよ。『えっ? 飛び降りる? 何も教わってないのに?』と焦っていると、千葉さんは体を丸めて鮮やかに飛び降りていく。ぼくはそのあとを見よう見まねでついていく感じで、必死でしたね」(谷・以下同)
千葉さんにとって、肉体はすべてだったと、振り返る。
「千葉さんは体に気を使っていたと思います。酒もあまり飲まないし、劇中ではたばこをふかすシーンもありましたが、煙はなるべく吸わないようにしていたんじゃないかな。アクションもいま風にワイヤーを使うのではなく、ミニトランポリンを使って、人間本来の体の動きにこだわって見せていたというか……。80才でも若々しかったですし。
イベントなどでご一緒したときは、“また『キイハンター』をやりたいな”という話で盛り上がりました。
ぼくが千葉さんの動きを直接見ていろいろ覚えたように、真のアクションを、体を張ってもっともっと若手に伝えてほしかったですね」
【プロフィール】
谷隼人/俳優。東映映画『網走番外地シリーズ』などに出演。実力派俳優として映画、ドラマなどで幅広く活躍中。
※女性セブン2022年1月6・13日号