中国共産党機関紙「人民日報」はこのほど、改革開放路線に関する長文の署名入り論文を掲載したが、そのなかで歴代の最高指導者であるトウ小平氏に加え、江沢民、胡錦濤の両元国家主席の果たした役割を称賛しているものの、現在の最高指導者である習近平国家主席に関して一言も触れていない。さきの第3次「歴史決議」では習近平氏の功績について3万8000字の論文のうち半分以上を費やしているのに、今回の論文で全く触れていないのは極めて異例だ。ネット上では「習近平政権に対する中国共産党内の不満を反映したものだ」との中国問題専門家や識者の声が上がっている。
人民日報の論文は「改革開放は初めての党の偉大な覚醒である」という表題で、中央党史文献研究院の曲青山院長が執筆し、12月9日付人民日報の理論面(第9面)に掲載された。
その内容はトウ氏が構築した「中国の特色ある社会主義」の基本システムの確立が、現代中国のあらゆる発展と進歩の基本的な政治的前提と制度的基礎を築いたことを強調。トウ氏の後継者である江氏は在任中に「三代表」という重要な思想を打ち出し、改革開放路線を21世紀に橋渡しして、その後の指導者である 胡氏在任中に同路線の実践的、理論的、制度的な改革を進め、発展させることに成功したと称賛した。
しかし、論文では習氏の名前は一切触れていない。これについて、中国事情に詳しい香港の中国問題専門家、林和立(ウィリー・ラム)氏は米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に対して、「曲氏は習氏が政権に就いた9年間で、改革開放にほとんど貢献していないと考えており、この見方は明らかに党内の一部を代表している。『反習近平』とまではいかないにしても、習氏が近年、トウ小平路線に反して、毛沢東路線に回帰する保守的な経済的・政治的措置に対する不満を表している」と指摘している。
一方、中国の時事評論家である五岳散人氏もRFAに対し、人民日報の理論ページは党の指導思想を反映しているため、一面よりも重要であるとしたうえで、「党内には習近平が改革開放路線に逆行していると反発するグループがあり、それらの人々が論文という形で、習氏の路線に反対の意思を表明したといえる」と主張し、党内における反習近平グループの発言力が強まっているとの見方を明らかにしている。