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田原総一朗氏 妻に先立たれて孤立しないため「社会と繋がっておくべき」

節子さんの介護が社会との接点にもなった

節子さんの介護が社会との接点にもなった

 もしも妻に先立たれたら──そんな仮定で人生を考えたことがない人が多いのではないだろうか。ただ、経験者の話を聞くと、長い人生のなかで“その時”に備えておくことが重要だとわかってくる。どのように悲しみを乗り越えていったのか、ジャーナリスト・田原総一朗氏(87)に聞く。

 * * *
 田原氏は、2度妻に先立たれた経験をしている。1983年に前妻の末子さん(享年54)が、2004年には再婚相手の節子さん(享年68)が、ともに乳がんで亡くなった。

 田原氏は仕事から家事まで、田原事務所の代表取締役でもあった節子さんに頼りきりだったという。節子さんを亡くした当時をこう語る。

「女房はマネージャーというか、私のプロデューサーでした。仕事を受けるかどうかの判断から、講演会主催者との打ち合わせまで任せていました。闘病生活は5年と数か月間だったんですが、実は女房の介護がとても楽しかった。お風呂に入れたり、髪を洗ったり。頼ってばかりだった男が、少しでも頼られることが嬉しいというかね。介護を通して女房とのコミュニケーションが濃密になり、楽しかったんです」

 だが、ジャーナリストという仕事柄、取材で海外に渡航することも少なくなかった田原氏は節子さんの最期を看取ることができなかった。

「小泉政権だった当時、2004年8月に北朝鮮への取材が決まりました。ちょうど女房はどんどん調子が悪くなり、医者からは『そろそろです』と言われていました。でも、女房に相談したら『(北朝鮮に)行ってきなさい』と背中を押してくれた。最後までプロデューサーだったんだね。訃報は北朝鮮の平壌で聞き、娘が看取りをしてくれました」(田原氏)

 妻の死に目には会えなかった田原氏だが、帰国後に悲しみを紛らわせてくれたのも仕事だった。

「妻の最後の時期には、イラク戦争に日本が参加するかどうかが大問題になっていた頃。それが一息ついたら、今度は郵政民営化で大揉め。そういう大きな問題が立て続けに起こったから、僕は仕事に没頭できた。そうでなければ、死にたくなっていたと思うよ。妻の死で非常に気持ちが落ち込んだけど、それが表に現われることはなかった。それほど仕事が忙しかったということだね」(田原氏)

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