コロナで外出が難しかった2021年は読書に励んだ人も多かったはず。本に関する仕事に携わる女性たちは2021年、どんな本を読んだのでしょうか? 「私が選ぶ3冊」を聞いてみました。
●金井真紀さん(文筆家・イラストレーター)/文と絵を担当した『戦争とバスタオル』が話題に
『まっくら 女坑夫からの聞き書き』/森崎和江/岩波文庫
ずっと読みたかった森崎和江さんのデビュー作が文庫に。炭坑で働いた女性11人の聞き書き。男と同じ力仕事、妊娠しても休まない、事故多発……。極貧の中にある人情や恋愛事情、怪談やタブーも興味深く、九州弁で綴られる一部始終に圧倒されました。
『やさしい猫』/中島京子/中央公論新社
『FOOD ANATOMY 食の解剖図鑑 世界の「食べる」をのぞいてみよう』/ジュリア・ロスマン 訳・神崎朗子/大和書房
●和田靜香さん(音楽ライター)/『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』が話題
『民主主義とは何か』/宇野重規/講談社現代新書
生きづらさをなんとかしたい!と、国会議員と問答を重ねて本を書いた2021年。私ごときが何語る?と自信をなくすたびに読み、国の主権者は私、堂々行け!と自ら鼓舞した。コロナ禍で政治のお粗末さが目立つ。変えられるのは私たちだと気づいた。
『女性のいない民主主義』/前田健太郎/岩波新書
『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』/近藤弥生子/ブックマン社
●トミヤマユキコさん(マンガ研究者)/『少女マンガのブサイク女子考』でルッキズム問題に挑んだ
『今夜すきやきだよ』/谷口菜津子/BUNCH COMICS
「あいこ」と「ともこ」によるルームシェア物語。結婚して家庭を持ち、子を産み育てることだけが女の幸せじゃない。それはわかっているけれど、この社会では旧タイプの価値観もまだまだ根強いわけで……。試行錯誤するふたりに勇気をもらえます!
『つつがない生活』/INA/torch comics
『推しの子』/赤坂アカ×横槍メンゴ/ヤングジャンプコミックス
●温水ゆかりさん(ライター)/本誌・女性セブン「魅惑の新刊レビュー」でおなじみ
『自由研究には向かない殺人』/ホリー・ジャクソン 服部京子・訳/創元推理文庫
女子高生ピッパの家族は4人(黒人の義理父のキャラが実にいい)+犬。自由研究に「調査報道」を選び、5年前インド系秀才が女子高生の失踪事件に関わり自殺したとされる事件を洗い直す。差別や偏見を排する彼女の正義感は青春の煌めきそのもの!
『国対委員長』/辻元清美/集英社新書
『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』/和田靜香 取材協力・小川淳也/左右社
●佐久間文子さん(文芸ジャーナリスト)/『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』が各紙書評で話題に
『剛心』/木内昇/集英社
明治の建築家妻木頼黄の、孤高の姿を描く。維新前の江戸の街並みを愛した妻木は、欧化、近代化を急ぐ日本にあって、過去と未来を確実につなごうとした。公共建築にかかわるすべての人に読んで、その生き方を知ってもらいたくなる。
『月夜の森の梟』/小池真理子/朝日新聞出版
『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』/鈴木忠平/文藝春秋
※女性セブン2022年1月6・13日号