12月21日、臨時国会が閉会した。政府は24日に2022年の予算案の閣議決定を経てこの一年を締めくくる。通常この時期は、各省が財務省に内示された原案に対して、要求が通らなかった項目の復活を求める復活折衝が山場となる。しかし今回は波乱要因がなく、内閣支持率も上昇傾向にあり、岸田内閣は滑り出し上々の恰好だ。
そんな岸田政権のなかでもとりわけ調子が良いのが麻生太郎・副総裁である。麻生番記者が語る。
「政権が代わり財務大臣を離れたことで、少しは暇になるのかなと考えていましたが、復活折衝を前に官僚や族議員の来客は後を絶ちません。大臣時代より忙しいんじゃないでしょうか」
麻生氏の現在の肩書は、名誉職的な位置づけの自民党副総裁に過ぎない。しかし、安倍・菅両内閣で約9年間に渡り財務大臣としてアベノミクスをはじめとする経済財政政策の舵取りを担っただけにその影響力は健在で、岸田文雄・首相の後見役として党内外に睨みを利かせる存在である。
臨時国会を前にした11月22日、麻生氏は茂木敏充・幹事長を伴い、岸田首相、松野博一・官房長官と4人で会食した。「政府と自民党の間で適切に意思疎通を図りたい」(松野官房長官)とする首相官邸の求めに応じたものだ。茂木氏と同じ党三役である高市早苗・政調会長と福田達夫・総務会長が呼ばれなかったことから、岸田政権運営における茂木氏とその後ろ盾とも言える麻生氏の存在をより際立たせる会食となった。それに対し抵抗勢力とも言える存在が、高市氏である。前出・麻生番記者が語る。
「政府と党との調整、党務の要は茂木さんですが、安倍さん(晋三・元首相)を後ろ盾にする高市さんは、総裁選の決選投票に勝ち進みポスト岸田は自分だ、との思いが強い。そのため茂木さんの意向を無視して独断で物事を進めるきらいがあります」
象徴的なのが、自民党政務調査会の中に置かれた「財政政策検討本部」の発足(11月29日)だ。同本部には積極財政派が多く顔を並べ、高市氏は安倍氏を最高顧問に迎えた。財務省がこだわる財政健全化に向けたプライマリーバランスの黒字化目標の棚上げを狙ったものであるが、これは茂木幹事長の顔に泥を塗るものであり、しかも現在財務大臣を務める鈴木俊一氏は、麻生氏の義弟である。麻生氏からすれば、庭先を高市氏に荒らされたことになる。