NHK大河ドラマ『青天を衝け』は12月26日に最終回を迎える。“日本資本主義の父”と称される渋沢栄一を人気俳優・吉沢亮が演じたことでも話題を集めた。視聴率も好調で、SNSなどでも「名作」と評価する声が目立った。1年近く好調を持続できた背景をコラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが解説する。
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まもなく最終回となる『青天を衝け』。2月放送開始という変則スタートながら、安定した視聴率を獲得し続けてきた。そこで、その人気の秘密を改めて考えてみたいと思う。
秘密その1は、序盤のロケ地の素晴らしさだ。渋沢栄一は、武蔵国の血洗島村(現在の深谷市)の有力農家の嫡男として、藍玉の製造や販売を手伝いながら、商才を磨く。舞台となる血洗島村は、丸ごとオープンセットとして群馬県安中市に作られている。東京ドーム5個分の広大な土地に2トンダンプ40台分の土を運んで藍や桑を三千本以上植え込み、栄一の生家のセットもほぼ実物大で再現。道祖神やほこらまで造られたという。
青々とした藍の畑を栄一やいとこの喜作(高良健吾)は、思い切り走り回る。子ども時代は、囚人(砲術家の高島秋帆・玉木宏)に興味を持ち、夜道を疾走。少年となって、商用で父と江戸へ行けると大喜びで喜作の家に駆け込む。
コロナ禍で家にこもりがちな毎日、この突き抜けた映像は、気持ちよかった。村の祭り、川遊び、畑の収穫、葉を広げた「ひこばえの木」、爽快な空気を感じさせるスタートダッシュだった。
秘密その2は、栄一のおしゃべりを活かし、しばしば名言が飛び出したこと。
たとえば、初めて江戸に出た栄一は、祭りのようなにぎわいに浮かれるばかりではなく、町を動かしているのが商いだと気づく。そして出たのが、「この町は商いでできている!!お武家さまがまるで脇役だ。こんなほまれはねぇ。この江戸の町はとっさまみてぇな商い人がつくってるんだいな」という言葉。世の中を動かしているのは誰か。視聴者にも気づかせるのだ。
また、パリで証券取引所に案内され、債券の仕組みを教わった栄一は目を輝かせる。
「小さな力を合わせて大河の流れを作り、一人では決して出来ないみなが幸せになるものを生み出す。一人が嬉しいのではなく皆が幸せになる。一人一人の力でこの世を変えることが出来る。おかしれぇ。これだ。俺が探し求めてきたことはこれだ!」