お正月の定番料理のお雑煮。実は各地で素材や味、作り方が違う。全国のお雑煮を探究し続けるお雑煮博士・粕谷浩子さんに、各地からおいしいお雑煮を厳選していただきました。今回は、東日本の角もちを使ったレシピを紹介します。
●北海道「揚げもち玉ねぎ雑煮」
揚げたもちがスープにコクを! 玉ねぎの甘みがたまらない!!
■作り方 ※材料は特記以外、すべて2人分です。
【1】角もち2個はそれぞれ半分に切る。玉ねぎ(中)1/2個はくし形切りにする。
【2】鍋に【1】の玉ねぎ、だしの“めんみ”(※)1/4カップ、水1.5カップを入れて、弱火で煮立たせたら、砂糖小さじ2を加えて味を調え、火を止める。
【3】フライパンに揚げ油適量を入れ、160?170℃に熱し、【1】の角もちを揚げる。【4】器に【2】を注ぎ、【3】のせる。
※めんみとは、かつおぶし・煮干し・昆布・さばぶし・帆立の5種類のだしが入った北海道限定販売のめんつゆ。ない場合、 市販のめんつゆに、するめや干し貝柱を入れて代用を。
■お雑煮トリビア
北海道は各地から開拓団が集まって形成された。そのため、お雑煮もさまざまな種類が混在している。このレシピは、先祖が石川県出身の北海道民に粕谷さんが聞いたもの。「もちと万能ねぎが特徴の石川の雑煮が、北海道では名産の玉ねぎに姿を変えたのでしょう」(粕谷さん・以下同)。
●岩手「宮古くるみ雑煮」
お雑煮からもちだけを取り出して甘いくるみだれにつけて食べる
■作り方
【1】角もち2個は軽く焼き目がつくまで焼く。
【2】高野豆腐1枚は水適量で戻し、水気をしっかり絞る。
【3】大根3?4cmとにんじん1/4本は皮をむき、【2】とともにそれぞれ千切りに。ごぼう1/4本は皮をこそいでささがきにして水適量にさらし、あくを抜く。鶏もも肉50gはひと口大に切る。
【4】に煮干しのだし汁2カップを入れて火にかけ、【3】を入れて火を通す。
【5】煮立ったら火を止め、しょうゆ大さじ1と1/2と塩少々を入れ、せり適量を加える。
【6】器に【1】と【5】を盛り、イクラ適量を飾る。別皿でくるみだれ適量を添える(くるみだれは、フライパンで乾煎りしたくるみ60gを、すり鉢にあけて砂糖30gを加えてよくすりつぶし、お雑煮のだし汁大さじ1と1/2を加えて混ぜる)。
■お雑煮トリビア
たれにつけるのは、岩手のなかでも伊達藩だった地域の特徴。たれはくるみのほかに、あんこ、納豆、大根おろしなど、甘いものからしょっぱいものまでさまざま。ちなみに、くるみ拾いは昔から子供が楽しみながらやっていたそう。
●茨城「常陸太田雑煮」
野菜などの具は一切ナシ! 豆腐スイーツのような味わい
■作り方
【1】角もち2個は焼き目がつかない程度に焼く。
【2】すり鉢に木綿豆腐1/2丁と白みそ大さじ1を入れ、トロトロになるまでよくすりつぶす。
【3】鍋に昆布のだし汁2カップを入れて火にかける。【2】を入れ、砂糖大さじ1と塩少々で味を調える。
【4】器に【1】と【3】を盛る。
■お雑煮トリビア
常陸太田市の旧久慈郡水府村、里美村地域のお雑煮で、「豆腐もち」「べったらもち」ともいう。「昔、砂糖はぜいたく品だったため、お正月ぐらいはと、甘い味つけになったのでしょう」。
●東京「東京江戸雑煮」
徳川家のお雑煮が起源!? みりんが効いたすまし汁派の定番
■作り方
【1】角もち2個は軽く焼き目がつくまで焼く。
【2】しいたけ2枚は十字に飾り包丁を入れ、鶏もも肉1/2枚(125g)はひと口大に切る。三つ葉2本は茎の部分をひと結びする。小松菜2株はゆでて水気を絞り、5cmほどに切る。
【3】鍋にかつおと昆布のだし汁2カップを入れて火にかけ、【2】の三つ葉以外を入れて火を通す。あくをすくい、しょうゆ大さじ1.5とみりん大さじ1を入れ、火を止める。
【4】器に【1】と【3】を盛り、【2】の三つ葉となると巻きを飾る。
■お雑煮トリビア
「徳川家康の先祖が不遇の時代、信州でうさぎ肉の汁を食べたところ運が開けたことから、その後の徳川家の雑煮には、うさぎの肉と小松菜が入っていたといわれます。これが江戸雑煮の起源になったのでしょう」
●新潟「新発田の鮭親子雑煮」
「全国雑煮合戦」が開催される新発田では鮭とイクラがメイン
■作り方
【1】角もち2個は軽く焼き目がつくまで焼く。
【2】大根とにんじん各3cmは短冊切りに、ごぼう1/3本はささがきにして水適量にさらし、あくを抜く。塩鮭1切れ、鶏もも肉1/4枚(62.5g)、白こんにゃく1/3枚は適当な大きさに切る。
【3】かまぼこ1cmはいちょう切りに、三つ葉2本は1cmの長さに、ゆずの皮少量は細切りにする。
【4】鍋に昆布のだし汁2カップと【2】を入れて火にかけ、あくをとりながら材料がやわらかくなるまで煮たら、しょうゆ大さじ1を入れる。
【5】別の鍋で水適量を煮立たせたら、イクラ適量を入れ、表面がうっすら白くなるまでゆでる。
【6】器に【1】と【4】を盛り、【3】と【5】を飾る。
■お雑煮トリビア
東西に長く、沿岸部と山岳部との文化に違いのある新潟県には、さまざまな種類のお雑煮がある。「下越(かえつ)地方(新発田市)では鮭とイクラの親子雑煮が主流。一方、上越地方では鮭は入れず、佐渡ではぜんざいにゆでたもちを入れます」。
●富山「黒部のふくらぎ雑煮」
出世魚ぶりの幼魚“福来魚”が主役の一椀
■作り方
【1】角もち2個は軽く焼き目がつくまで焼く。
【2】ふくらぎ1切れは焼いて骨を取り、身をほぐす。
【3】にんじん3cmは皮をむいてささがきに、ごぼう1/4本は皮をこそいでささがきにして水適量にさらし、あくを抜く。焼き豆腐1/4丁と白こんにゃく1/4枚は短冊切りに、赤巻き(巻きかまぼこ)4cmは食べやすい大きさに切る。
【4】鍋に昆布のだし汁2カップと【3】を入れて火にかけ、材料がやわらかくなったら【2】を入れる。
【5】器に【1】と【4】を盛る。
■お雑煮トリビア
「ふくらぎは『福来魚』と書き、出世魚であるぶりの幼魚のこと。縁起のいい魚とされ、素焼きし、ほぐしてからお雑煮に加えるのが一般的。同じ黒部市でも、さば、かわはぎを入れる地域もあります」
●愛知「名古屋雑煮」
「白(城)は焼かない」など、縁起を担いだレシピに
■作り方
【1】愛知県の伝統野菜・もち菜(小松菜の仲間で尾張地方の在来種)1株は4?5cmの長さに切る(小松菜でも可)。
【2】鍋にかつおのだし汁2カップを入れて火にかけ、角もち2個を入れたら、やわらかくなるまで煮る。
【3】【2】にしょうゆ大さじ1、酒小さじ1、【1】を入れる。
【4】もち菜に火が通ったら火を止め、【3】を器に盛る。かつおぶし適量を飾る。
■お雑煮トリビア
「武家文化が残る名古屋では、もちの白色を“城”とかけ、“城は焼いてはならぬ!”ということで、煮たもちを使うようになったとか。また、“みそをつけない(失敗しない)”ように、名古屋なのに名産のみそは使わず、すまし汁仕立てに。縁起を担ぎまくった一椀なんです」
※材料は特記以外、すべて2人分です。
※参考文献/粕谷浩子著『お雑煮マニアックス』(プレジデント社)
取材・文/土田由佳 レシピ作成・写真/粕谷浩子
※女性セブン2022年1月6・13日号