年々、受験競争が厳しさを増している中国。東部の江蘇省南京市では、教育熱心な父親が、5歳の娘と7歳の息子に対して、夜遅くまで勉強することを命じ、さらに教材として高校、大学レベルのものを押しつけ、子供たちができないと怒鳴ったり、殴ったりしていたとして、南京市の裁判所は父親に子供たちへの接近禁止3か月の司法命令を下した。
中国では教育ママは「虎の母(タイガーマザー)」として有名だが、「虎の父」は珍しいという。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
この父親は、博士号の学位を有しており、まだ幼稚園児の娘や小学生2年生の息子にも「大学で博士号をとらせたい。そのためには、子供のうちからしっかりと勉強させないといけない」と常々言っていた。このため、子供たちにしばしば高校や大学レベルの国語や数学を教え、できないと夜遅くまで怒鳴ったり殴ったりしていたという。
この様子を見て、子供たちがかわいそうだと思った妻は夫を説得して、詰め込み教育をやめさせようとした。しかし、父親は「最終的に子供のためになる」として、妻の言葉を聞かなったため、妻は警察や子供たちの教師に「やめさせてほしい」と訴えた。彼らから説得された父親だったが、「子供のしつけは私的な問題」だと主張して、説得を拒絶した。
妻が最終的に裁判所に訴えたところ、裁判所は、「虐待や殴打を用いた父親の教育方法は不適切であり、子供たちに苦痛を与えている。彼の行為は苗の成長が遅いと言って、苗を引き伸ばそうとしているようなものだ」と結論付けて、子供たちへの3か月間の接近禁止命令を下した。
中国では厳しい受験競争に勝ち抜くために、学校での勉強に加え、子供たちが放課後の塾や補習で夜遅くまで勉強を強いられること。これに対して習近平国家主席自らが「子供たちの負担を減らさなければならない」などとして、「宿題、学習塾廃止令」が出されるなど社会問題化している。
ネット上では「父親のやり方は非常識だ。子供は親のおもちゃではない」など数多くの批判的意見が寄せられている。