「聞く力」を標榜する岸田政権の誕生で、世界に冠たるニッポン官僚は復活し、国の危機を乗り越えることができるのか。元官僚で政治とも縁深い寺脇研(元文科官僚)、原英史(元経産官僚)、豊田真由子(元厚労官僚、元衆院議員)の3氏が激論を交わした。【前後編の後編】
原:7月には参院選が控えるが、ともかく強い野党が出てきてほしい。そうでないと自民党が緩みまくるでしょう。“多少失敗しても、どうせ野党に投票する奴はいない”ということになると、緊張感を持った政権運営をしてもらえなくなる。少なくとも政治に緊張感を与える野党の存在が必要。日本維新の会にもその可能性があるし、代表が交代した立憲民主党もこれまでの政治行動を反省して運営方針を改めるなら変わってくるんじゃないか。
豊田:選挙の情勢は直前にならないとわからないが、政権交代が起こるような状況ではないと思っています。
寺脇:どの党が勝つか以前に、この時代、もう先送りできない大きな問題がある。豊田さんが触れたように(前編参照)、子どもや女性の自殺が増えている。根底にあるのは貧困・格差。
先の総選挙では各党は親にカネを配る話ばかりだったが、参院選は貧困・格差を放っておくのか、そうでないのかの民意を問う選挙にすべきと思う。親にカネを配ってもそれが子どものために使われるとは限らない。むしろ政治がすぐやれるのは、たとえば子どもの医療費を全額無料にするとか、給食を無料にして、希望する子どもには1日3食でも食べられるようにするとか。
私は大人には自己責任があると思うが、15歳以下の子どもには自己責任を問うことはできないのであって、全員セーフティネットで救う必要がある。自民党でも、共産党が主張してもいいが、主張する政党がなければ有権者は票を入れようがない。
原:私もそう思う。「強い野党」が必要というのは、野党が弱いままだとそうした議論ができる政治状況が生まれないという意味です。
「途上国」転落か
原:2022年はオミクロン株の緊急対応は大前提だが、その上で未来に向けた政策にすぐ取り組まなければならない。日本経済は30年停滞していると言われているが、世界がDX(デジタル化)やGX(脱炭素)で新しい産業革命に踏み出している中で、ここでさらに遅れると100年ぐらい差をつけられ、日本は完全に途上国に転落していく。この1年間は非常に大事な時期だと思っている。