出産時のトラブルで重度の脳性麻痺を患った堀江菜穂子さん(27才)。寝たきりで言葉も発することができない。そんな彼女がわずかに動く指先で綴った詩に感銘を受けた杉良太郎(77才)が、この度、彼女の詩を原詩とした楽曲をリリースする。
「どんな姿、形であろうとこの世界に『自分』はひとりだけしかいない。だから勇気を持って堂々と生きるんだ──。菜穂ちゃんが生み出す“いのちの叫び”のような詩を読んで、これは詩だけに留めず歌にしてたくさんの人に届けるべきだと直感したんです」
杉は菜穂子さんの詩を元に作詞をてがけた新曲『世界の中で』、『ありがとうの詩(うた)』(共に1月19日リリース)の背景をこう語る。
菜穂子さんは、通っていた特別支援学校の中学部時代に筆談を学んだ。指先がわずかに動くだけの彼女には「文字を書く」という行為自体が困難を極めた。それでも努力を重ね、時間はかかるが一文字ずつ書けるようになっていった。
高等部の頃、周囲の人の会話が耳に入り、自分が何も考えていないと思われているように感じたという。そこから、言葉を発することができない菜穂子さんは、自分の考えを伝えるために「詩」を書き始めた。「心を解放するための手段」だったという。
そんな彼女が心の声を紡いだ詩集『いきていてこそ』(サンマーク出版)を2017年6月に出版した。杉は、昨年5月、その詩の存在を知り、深く感銘を受けたと明かす。以来、杉が育てた、スイカなど季節の果物を菜穂子さんへ送ったり、菜穂子さんが杉に手紙を書くなどして、交流を深めてきた。杉は親交のあるEXILE ATSUSHI(41才)にも彼女の詩集を紹介。ATSUSHIも同じく感銘を受け、杉とは別に曲を作り始めたという。
「詩を書くことについて菜穂ちゃんは手紙で『わたしが、にんげんとしていきているあかしです』と教えてくれました。彼女は20数年間ずっと寝たきりで外へ出て走り回ったりすることはできません。でもそのぶん、頭の中では思い切り走り回っているんだろうなと感じました。つらい時間を乗り越えて到達した脳の仮想空間で楽しく思うままに動いて、誰でもない、たったひとりの『自分』を見出したのでしょうね」(杉、以下同)