いよいよドラマのほうでも新たなクールが始まる。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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テレビでは正月番組がほぼ消滅しドラマ全話再放送も目立った年初。1月3日、まだお屠蘇気分の中で早くも再開された連続ドラマが、NHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』です。
正体不明ゆえに「宇宙人」という仇名が付けられていた男が、実は人気トランペッターと判明。物語はギアを上げて展開していく勢い。そう、何と言っても新年早々、視聴者の視線を集めたのはトランペッター役として登場したオダギリジョーです。
身長はすらりと高くまさに正統派二枚目。リーゼント風の髪型でトランペットを吹く横顔を、惚れ惚れと見とれた視聴者も多いはず。しかしどこか脱力していてトホホな感じを持ち合わせているのがオダギリさん特有の魅力でしょう。役者としての色気やケレン味もあって視線を惹き付ける力はバツグン。不思議な魅力をまとったオダギリさんが今年も大暴れしてくれそうな気配です。
さて、民放の冬ドラマも続々とスタートするこの時期。まず、主役に期待したいドラマが1月6日にスタートした 『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』(フジテレビ系午後10時)。黒木華さんがフジテレビ系ドラマ初主演の注目作、しかも演じる役がニュースサイトの編集者とは。
物語は……月間5000万PVという目標を達成すべく「ゴシップで攻める」戦略を立てるネット編集者・凛々子(黒木華)の格闘ぶりを描く。完全オリジナルの社会派“風”お仕事ドラマとはいえ、業界事情を多少肌で感じている当方としては、いかに細部まで面白くリアルに描けるのかとハラハラしながら見守っています。
ストーリー展開もさることながら、黒木華という役者の力がどう発揮されるのかが最大の注目点。黒木さんは、タイプは違えどオダジョーに匹敵するような不思議な魅力を纏っている。いわゆる美形というより個性派、しかしだからといって「これ」という強いイメージはなく、ふんわりほんわか。それが強みかもしれません。どんな人にでもなれてしまう黒木さんに良い意味での「余白」を感じます。
例えば2016年放送の『重版出来!』(TBS系)では出版社の新人漫画編集者として突撃系を、2019年放送の『凪のお暇』(TBS系)では脱力ヒッピー風の自由人を演じて味わい深かった。一方で2021年の『イチケイのカラス』(フジテレビ系)では東大法学部出身で将来を約束されたエリート裁判官と、それぞれのドラマでさまざまな役柄を演じ、いずれも好評を博してきました。
黒木さんは強い押し出しがないかわりに、相手の求めるものを受け取る力、良い意味での余裕を感じさせる役者。さまざまな人物に変身できるからこそ、時代にピタリ合わせていくことが可能なのかもしれません。今回はネットニュースの編集者というまさに時代のど真ん中にいる、ちょっとクセのある職業人。いかに面白い人物を描いてくれるのか、期待はふくらみます。