昨年大みそかのNHK紅白歌合戦で、結果的に最大の「目玉」となったのは、初出場のシンガーソングライター・藤井風(24才)だった。12才のころから、自宅でピアノを弾き語りする動画をYouTubeで配信し続けて、衆目を集め、2020年1月に晴れてメジャーデビューした異色のミュージシャンだ。
紅白でも、そんな原点の岡山県浅口郡里庄町の実家からのピアノの弾き語りで出場。白組司会の大泉洋(48才)が「実家から紅白に出るなんて、今までありました?」と、驚くほどの特別演出だった。
ただ、本当のスペシャル演出は、この後だった。実家でキーボードで自身の曲『きらり』の1番を歌ったが、間奏場面で映像が変わると、紅白の会場・東京国際フォーラムのステージにサプライズで登場。驚く観客と司会者たちの前で、2曲目『燃えよ』を熱唱した。
紅組司会の川口春奈(26才)に「私たちも知らされていなかったんです」と驚かれて、「かっこいい!」と言われると、「よういいますわ~」と岡山訛りで恐縮。その後も、大トリのMISIA(43才)の『明日へ2021』でも、ピアノ演奏で再登場。紅白のクライマックスシーンで、日本屈指の歌姫とハモって、お茶の間にその名と顔を強く刻んだ。
実は今、エンターテインメント界は、この藤井を筆頭に「岡山県」が過去にないほどに熱い。
あるお笑いライターは、「近年のお笑い界では、岡山出身の芸人が続々とブレークしています」と解説する。最初に有名になったのは、ご存じ『千鳥』の2人。ボケの大吾とツッコミのノブが「○○じゃ」「○○すなぁ」と、クセの強い「岡山弁」でやりとりする漫才は、彼らの武器となり、岡山弁が世間に浸透していくのに一役買っている。
「彼らだけじゃないんです。2020年のM-1グランプリの決勝では、津山市出身2人のコンビ『ウエストランド』、高梁市出身のたけるさん(26才)の『東京ホテイソン』、和気郡出身のリリーさんの『見取り図』と、3組4人もいた。さらに昨年のM-1決勝にも、岡山市出身の兎さん(33才)がいる『ロングコートダディ』、昨年秋の『キングオブコント』では、岡山市出身の水川かたまりさん(31才)の『空気階段』が優勝……最近、お笑いのショーレースには岡山県出身者が目立つようになっているんです」(前出・お笑いライター)
お笑いだけではなく、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』も、物語前半の舞台は岡山県だった。
「現在、物語の舞台は大阪に映っていますが、それでも岡山弁が飛び交うシーンもあり、郷土のアピールにはなっています。新型コロナの影響があり、観光客誘致にはつなげにくいですが、この『カムカムエヴリバディ』や藤井風さんの人気によって、岡山の知名度はグングン上がっています。特に藤井さんの故郷である里庄町は、2021年度のふるさと納税が、制度開始の2008年度以来、初の1億円超えを記録しました。これは藤井さんのファンからの寄付が多かったため、と見られています」(岡山県の観光業関係者)