歌舞伎俳優の尾上松也(36才)が主演するドラマ『まったり!赤胴鈴之助』。江戸時代からタイムスリップしてきた鈴之助が、令和でまったりと過ごす様子を描くコメディだ。注目を集める松也の演技について時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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長年、時代劇を見ている私もまさかこんな日がくるとは思わなかった。テレビ大阪、BSテレ東で放送が始まった『まったり!赤胴鈴之助』。令和にタイムスリップした赤胴鈴之助の登場である。主演は、尾上松也。『赤胴鈴之助』は、亡き父・六代目尾上松助が子役時代の1957年のドラマ版で主演している。実に65年の時を経て、父子で役を継承したことになる。
しかし、父の鈴之助と松也の鈴之助では、まったくキャラクターが違っている(松助のドラマは生放送で確認することはできない)。そもそも『赤胴鈴之助』は、1950年代に少年漫画誌に連載された福井英一と武内つなよしによるマンガ作品。
父の形見の赤胴を身に着けた少年剣士・鈴之助が、北辰一刀流の千葉道場に入門。兄弟子・竜巻雷之進らと切磋琢磨しながら、剣の技を磨き、銀髪鬼率いる悪の集団「鬼面党」に立ち向かう。
くじけそうになりながら、悪と戦う少年剣士の物語は、ラジオドラマ化され、かの吉永小百合も出演。70年代にはアニメ化され、昭和のこどもたちにも支持された。私もそのひとりで、「赤胴鈴之助といえば、正義の剣士」というイメージだったのだが、この「まったり!」の鈴之助はなんなんでしょうか?
令和にタイムスリップした時点で、すでに少年ではないものの、姿かたちはしましまの袴におなかのところに巨大な鈴が描かれた赤胴とおなじみのスタイル。くっきりした顔立ち(眉毛もアイラインもバッチリ濃いめの美剣士フェイス)なのだが、入社した会社(入社できたんですね…)でPCのにおいをかいだり、「お茶もコピーもできません」と困惑顔。
自分は600円の日替わりランチなのに、先にタイムスリップして「この世界はいいぞ。頑張った分だけ金が稼げる」と羽振りのいい雷之進(今野浩喜)が高いランチのご飯大盛を頼むのを見て、悔し顔。
かと思えば、「平和って、ヒマだなあ~」とストローでクリームソーダを飲みつつぼんやり顔。正義の美剣士のはずが、変顔のオンパレードなのである。