3場所連続優勝を目指す横綱・照ノ富士に土がつき、大相撲初場所の優勝争いの行方は混沌としてきた。その会場となる両国国技館で、関係者の間で話題となっているのが、今場所から登場した「維持員専用ラウンジ」である。土俵下の溜席で観戦する「維持員」のための新サービスだというが、その評判は必ずしも芳しくないようだ。
維持員制度とは、協会に対して所定額の「維持費」を寄付した人たちが、土俵周りの「維持員席」での観戦が認められる制度のことを指す。新たに登場したのは、その維持員たちのための専用ラウンジだ。国技館2階でかつてレストラン「雷電」があった場所に位置する。昨年9月の秋場所まではプレスルームが置かれていた場所だが、それが「維持員専用ラウンジ」に改修されたのだ。
この新たなラウンジについてマスコミへの広報発表はとくにないが、維持員たちに送られてきた資料によれば〈相撲競技鑑賞の合間のひとときをおくつろぎいただくための、維持員の方のみがご利用いただける専用スペース〉なのだという。席数は50席で、利用料金は無料だが、事前のウェブ予約制となっている。1時間ごとの入れ替え制(5部)で、セルフサービスながら日本酒、ビール、ワイン、ソフトドリンク、焼き鳥などが用意されるとの説明がある。
航空会社が上級会員に向けて用意する空港のVIP専用ラウンジのようなイメージだが、維持員からは否定的な声も聞こえてくる。東京開催場所の維持員のひとりはこう言う。
「維持員っていうのは、土俵下の溜席から力士の技能審査をする立会人という位置付けです。その立会人に、アルコールを提供するサービスはおかしいんじゃないか」
相撲協会の公式サイトによれば、維持員は〈力士の相撲競技を鑑賞し、力士の技量の実態を把握し、これを育成することで、相撲道の発展を計ることとします〉〈「維持員席」にて当該維持員の属する地区の本場所相撲競技に立ち合う事となります〉とある。そうした位置づけだけに、厳しい行動基準があるのはたしかだ。
コロナ禍で国技館内は水分補給以外の飲食は禁止されているが、通常は桝席では相撲茶屋の浴衣にたっつけ袴姿の出方が運ぶビールや焼き鳥を飲食しながら観戦を楽しめる。それに対し、維持員が座る溜席では飲食が禁止。土俵の一番に集中し、弓取式が終了するまでの着席が義務付けられている。それだけに古株の維持員からは「ラウンジ」を疑問視する声が出たわけだ。