元大関・貴ノ花を父に持つ“若貴兄弟”が横綱となり、元関脇・栃東の次男が元大関・栃東(現・玉ノ井親方)、元関脇・鶴ケ嶺の息子が井筒3兄弟(鶴嶺山、逆鉾、寺尾)など、親子力士は珍しくない。ただ、「3代続けての幕内力士」は2例のみ。それが、今年の初場所注目の2人の“横綱の孫”である。
優勝32回を誇る元横綱・大鵬の孫で、元関脇・貴闘力の三男である21歳の王鵬(前頭18)と、元横綱・琴桜の孫で元関脇・琴ノ若の長男である24歳の二代目琴ノ若(前頭14)だ。王鵬は新入幕だが、関係者の期待は大きい。
「祖父・大鵬は新入幕の1960年初場所で初日から11連勝を飾り、12勝3敗で敢闘賞を受賞。新入幕から6場所で初優勝した。その姿と重ね合わせる関係者は少なくない」(相撲ジャーナリスト)
ただ、大鵬が得意とする左四つに組み止める相撲だけでなく、押し相撲や右四つも取れるオールラウンダーだったのに対し、王鵬は突き押しに偏る。「横綱を目指すにはもっと四つ相撲を覚える必要がある」(若手親方)という声も聞こえる。
一方の琴ノ若には“祖父と父のいいとこ取り”と評価する声が。
「祖父・琴桜は“猛牛”のあだ名の通り、大きな体で頭から激しく当たってそのまま左のど輪で一気に押す相撲が主だった。強烈なぶちかましは稽古場で相手から嫌がられたほど。父の琴ノ若は192cmの長身で立ち合いの突っ張りから右四つに食い止め、左からの上手投げで仕留めるスケールの大きな相撲だった。二代目琴ノ若も188cmと恵まれた体格で、父と同じく右四つに組み止めて上手投げや寄り切る相撲が得意なうえに、長いリーチで祖父のような突き押しもできる」
王鵬と琴ノ若は同じ埼玉栄高校出身だ。
「2人とも高校の先輩の大関・貴景勝を尊敬しているが、王鵬が貴景勝と同じ押し相撲を志向するのに対し、琴ノ若は寄り切れる技術もある。貴景勝も大関で足踏みしているから、横綱を目指すには琴ノ若のほうが近いのでは」(担当記者)
21歳3か月で横綱に昇進した大鵬と違い、琴桜の昇進は32歳と遅咲きだったが、孫の代ではそれが逆転するかもしれない。
※週刊ポスト2022年1月28日号